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「まあ、ありがとう……ジュン様、お部屋の支度が整いましたよ」
メイドさんは僕を追いかけてきたジュンに声をかけている。
おへや。
もうだめだ。ジュンと二人でお部屋なんかに入ったら何をされるか分かったものではない。
僕はメイドさんにリネンを渡すと、また玄関の方へ走り出した。
「オト! 待って!」
玄関の大きな扉には、鍵がかかっていた。もたついていたら、ジュンに捕まってしまった。
「は、離せー!」
「ごめん冗談だって」
「冗談であんなことする人とは笑いのセンスが合わないから出てく」
ジュンはいきなり大笑いし始めた。
「何だよ……こっちは本気で言ってるのに!」
ジュンはごめんごめんと実に軽い感じで謝りながら、ドアを押さえて僕を通れなくした。
「その服を着ているあなたの後ろ姿が、どうしても幼い頃のケイちゃんに重なってしまって……」
また、ケイトか。ジュンの思考回路の中心には、常にケイトがある。このことを僕は肝に銘じておかないといけないようだ。
「ケイトにもあんな目で迫ったりしてたの?」
「あんな目って?」
「吸血鬼みたいなギラギラの目だよ」
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