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「領主様は出席するの?」
「もちろん」
「……」
領主様に正体がバレていることをジュンが知らないのは問題だ。
僕の着替える手が止まる。するとジュンはベッドに腰かけて僕を前に立たせ、首元のネクタイを結んでくれた。
「そういえば、夏の館の門の前に、馬の蹄の跡がくっきりと残っていました……昼間、私の他に誰か訪ねては来ませんでしたか」
僕はごくりと唾を飲む。それは多分、領主様の足跡だ。
でも領主様はジュンには内緒にする様にと仰せだったから、話すわけにもいかなかった。領主様は領主様で、ジュンの立場を思っての口止めなのだろう。
大きな鏡の前に立たされた。小姓姿の僕の髪を、ジュンは優しく整えてくれた。
ジュンは、ケイトが僕の正体を知って傷つく事を恐れている。すでにその心配はいらなくなったということを、やっぱり教えてやりたい気もする。
僕がぐるぐる迷っていると、ジュンは言った。
「晩餐会で、ケイトをあなたに会わせてみようと思うのですが、どうでしょうか」
僕はびっくりした。
「正体を話すの」
「いいえ、あくまで私の小姓として紹介するだけです。それで、ケイトを試してみたい」
僕はジュンの顔を見た。ケイトを「試す」なんて言い方は、何となく、ジュンらしくないような気がしたのだ。
「ケイトが少年の貴方を愛せるかどうか。僕はそれが知りたい。晩餐会であなたの姿を見たケイトがどう反応するのか、試してみましょう」
「そんなことをして何になるの」
「恋なのか、妖精の呪いなのかが分かります」
「どういうこと?」
「貴方の本当の姿を見てもケイトが何も感じないのなら、単に呪いでアリスに恋焦がれているだけなのでしょう」
ジュンの言葉にはっとする。確かに、ピノは贈り物をくれる時、アリス=ビョルンを名指ししていた。正確にいえば、僕ではない。
「でももし、ケイトが貴方の正体を見抜けたとしたら、貴方への愛が本物だということではありませんか」
「そ、そうとは限らないよ」
僕は焦った。結果は後者になるということは昼間に実証されていた。領主様には僕の正体がすぐにわかってしまったんだ。
だけど、それが本当の愛の証拠だなんて決めるのは早い。
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