Ⅵ-5 恋の恨み

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「ほんとですよ。大方、ケイちゃんに口止めされていたのでしょうけど」  僕はジュンに謝る。領主様にも、心の中で謝る。 「貴方の正体にも気付いておられたんですね」 「うん」  ジュンは僕を抱きしめて耳元でささやいた。 「貴方に言い寄ってこられましたか?」 「そっ……そんなことしないよ……」 「本当ですか? やけに顔が赤い」  僕は顔を伏せる。 「ケイトの匂いがする……抱き合って、キスでもしたんですか?」  ジュンは僕の首筋に鼻を擦り寄せた。僕は怖くなる。またケイトの名残香を探しているの? 「私にしたように、ケイトを突き飛ばしたりはしなかったのでしょう」 「はっ!確かに」  そういえば、ケイトには何をされても鳥肌なんてたたなかった。ふわふわして、身体が溶けそうになっただけ。  僕は何も言わなかったけど、どんどん顔が赤くなるのを止められなかった。ジュンは全て察したようだった。ジトっとした目で僕を見ている。 「ごめん、ジュン……」 「悪いと思うならじっとして」  そういうなり、ジュンは僕のくちびるを奪った。 「ん~っ? ん~!」  僕がジタバタするのも構わず、ベッドに押し倒してさらに深くキスしてくる。  僕はやむなく、彼の急所を蹴った。 ********** 「落ち着いた?」 「はあ……」  ジュンはベッドに腰掛けて顔を覆っていた。 「ケイトに会ったことを黙ってたのは、ごめん」  蹴りを入れたことに関しては謝らないが。 「領主様とは、いろいろ昔のこととか、星の話とかしただけだよ」 「キスは」 「確かに、最後に……はしてくれたけど……」  僕の声はちょっと詰まって、震えた。 「たぶん、お別れのキスだよ」 「お別れのキス?」 「うん、そういうことだったんだと思う」  言葉にして初めて気がついた。あれはただのキスじゃなかった。さようならの意味を込めたキスだったんだ。 「領主様は、おふれを解いて僕を自由にしてくれるって言って、すぐに出ていったんだ」  そう言った時のケイトの顔を思い出し、僕はなぜか泣きたくなった。ケイトは笑っていたけど、すごく寂しそうな目をしていたんだ。 「僕を自由にしてくれるということは、ケイトは僕をそばに置く気はないということでしょう?」  ジュンは顔を上げた。
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