12人が本棚に入れています
本棚に追加
「ほんとですよ。大方、ケイちゃんに口止めされていたのでしょうけど」
僕はジュンに謝る。領主様にも、心の中で謝る。
「貴方の正体にも気付いておられたんですね」
「うん」
ジュンは僕を抱きしめて耳元でささやいた。
「貴方に言い寄ってこられましたか?」
「そっ……そんなことしないよ……」
「本当ですか? やけに顔が赤い」
僕は顔を伏せる。
「ケイトの匂いがする……抱き合って、キスでもしたんですか?」
ジュンは僕の首筋に鼻を擦り寄せた。僕は怖くなる。またケイトの名残香を探しているの?
「私にしたように、ケイトを突き飛ばしたりはしなかったのでしょう」
「はっ!確かに」
そういえば、ケイトには何をされても鳥肌なんてたたなかった。ふわふわして、身体が溶けそうになっただけ。
僕は何も言わなかったけど、どんどん顔が赤くなるのを止められなかった。ジュンは全て察したようだった。ジトっとした目で僕を見ている。
「ごめん、ジュン……」
「悪いと思うならじっとして」
そういうなり、ジュンは僕のくちびるを奪った。
「ん~っ? ん~!」
僕がジタバタするのも構わず、ベッドに押し倒してさらに深くキスしてくる。
僕はやむなく、彼の急所を蹴った。
**********
「落ち着いた?」
「はあ……」
ジュンはベッドに腰掛けて顔を覆っていた。
「ケイトに会ったことを黙ってたのは、ごめん」
蹴りを入れたことに関しては謝らないが。
「領主様とは、いろいろ昔のこととか、星の話とかしただけだよ」
「キスは」
「確かに、最後に……はしてくれたけど……」
僕の声はちょっと詰まって、震えた。
「たぶん、お別れのキスだよ」
「お別れのキス?」
「うん、そういうことだったんだと思う」
言葉にして初めて気がついた。あれはただのキスじゃなかった。さようならの意味を込めたキスだったんだ。
「領主様は、おふれを解いて僕を自由にしてくれるって言って、すぐに出ていったんだ」
そう言った時のケイトの顔を思い出し、僕はなぜか泣きたくなった。ケイトは笑っていたけど、すごく寂しそうな目をしていたんだ。
「僕を自由にしてくれるということは、ケイトは僕をそばに置く気はないということでしょう?」
ジュンは顔を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!