ウラシマ天使

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「ねえ、亀さん」 「な、なんですか……?」 「世界って、こんなに早く変わるものでしたっけ」 「えっと、竜宮城ってそういう場所なので……」 「へ?」  竜宮城に行くまでの海辺は、特に何もありませんでした。  それなのに、今は立派な漁港が出来ています。  なんで?  めっちゃ時が進んでる? 「じゃあ、儂は帰りますんで」 「パパありがとう! ぼくはもうちょっとここにいる!」 「ああ。早めに帰ってくるんだぞ」 「はーい」  なにか亀さんたちが話していますけど、まったく頭に入ってきません。  あ、めっちゃ神様からのお怒りメッセージが来てる。  え? 100年も経ってるの?    えっと、もしかして、私の使命、失敗した……?  竜宮城にいて、時間が過ぎたから……?  あ、玉手箱。  開けちゃいけないって言ってたやつ。  まあいいや、開けちゃおう。  ボフン、と。  箱を開けた瞬間、周囲に広がる煙。 「げほっ! げほっ!」  あれ?  中身が入ってない?  周囲は特に変わってない? 「てんしさん、くろくなってる!」 「え?」  あ、ほんとだ。  背中が黒くなってる。  これって、堕天したってこと?   「あははははははははははははははは!!」  なんだか、とっても清々しい気分!  力が漲ってくるっ!  地上をメチャクチャにしてやりたい!!!  そうすれば、神様に見てもらえるんですから!  堕天使の炎に包まれていく地上。  人々や動物は、どんどんと倒れていっている。  それを目撃して、固まっている子亀。 「ぼく、ぼくがイジメられたせい……? それとも、りゅうぐうしょうにつれていったせい?」  泣きながら震えている。 「ボクがよわいから、こんなことになっちゃったの……?」  この時の私は、子亀の葛藤なんて興味がありませんでした。  ですが――  数年後。  史上最強の亀がうまれました。  最強の亀には慈悲などありません。  堕天した私を倒し、救世主として崇められて、竜宮城も地上も再び平和を取り戻したとさ。  めでたし♪ めでたし♪  …………いや、私的にはまったくめでたくないが? ――――――――――――――――――――――――――― 元々の浦島太郎って、イジメられていた亀視点では何も解決してないですよね……。
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