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第1章
僕は今病室の目の前にいる。別に身内のお見舞いとか彼女のお見舞いとかそんなのじゃない。ただ、僕の命の恩人であるというだけ。いや、命の恩人だなんて簡単か言葉で一括りにしては行けない気がする。彼女は僕の、僕の何なのだろう。僕のという言葉自体間違いだろう。
「あれ、呉羽来てたの?」
僕の目の前に突然現れたのは綺麗な艶のある少女だった。
「さっき来たところだよ」
「そっか、話したいこともあったからちょうどよかったよ」
そう言って彼女は病室の扉を開ける。僕の目の前を歩く彼女はいつ見ても凛々しく感じる。けれど、僕が知っている彼女はあの頃と同じではない。
病室に入り、ベッドに座る彼女の横に椅子を置き僕も座る。話したいことはいくらでもある。けれど、何から話すのか切り出し方が分からない。
「ねぇ、呉羽」
「なに?」
「私ね、余命1ヶ月だって」
「は……?」
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