第1章

1/2
前へ
/7ページ
次へ

第1章

 僕は今病室の目の前にいる。別に身内のお見舞いとか彼女のお見舞いとかそんなのじゃない。ただ、僕の命の恩人であるというだけ。いや、命の恩人だなんて簡単か言葉で一括りにしては行けない気がする。彼女は僕の、僕の何なのだろう。僕のという言葉自体間違いだろう。 「あれ、呉羽(くれは)来てたの?」    僕の目の前に突然現れたのは綺麗な艶のある少女だった。 「さっき来たところだよ」 「そっか、話したいこともあったからちょうどよかったよ」  そう言って彼女は病室の扉を開ける。僕の目の前を歩く彼女はいつ見ても凛々しく感じる。けれど、僕が知っている彼女はあの頃と同じではない。  病室に入り、ベッドに座る彼女の横に椅子を置き僕も座る。話したいことはいくらでもある。けれど、何から話すのか切り出し方が分からない。 「ねぇ、呉羽」 「なに?」 「私ね、余命1ヶ月だって」 「は……?」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加