1人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は耳を疑った。嘘だと思いたい。昨日まで普通に話していたし、いつもみたいに明るい笑顔を見せてくれていた。それは、僕に隠していたのだろうか。
なんで言ってくれなかった?
僕に心配をかけたくなかった?
僕じゃ頼りなかった?
僕はなんで気づかなかった?
僕は何を見ていた?
僕は、僕は誰を見ていたんだ。
「呉羽、大丈夫?」
「なんで僕に大丈夫なんて聞くの?」
「呉羽、ごめんね。突然こんなこと言って」
「別に乃々華は悪くないでしょ」
「すぐに言わなかった私が悪いから」
「乃々華は悪くないよ」
「でも……」
「ごめん。気づけなくて……乃々華が苦しいって思ってることにも悩んでることにも僕は気づいてあげられなかった」
「呉羽、違うよ…」
「違わない……何も違わないんだよ」
「……呉羽、帰って。頭冷やしてきて。きっと今は話せないから」
「わかったよ……」
僕は乃々華の話を聞けなかった。いや、聞かなかった。聞きたくなかった。
僕は彼女の異変に気づけなかったことが嫌だったんじゃない。そうじゃなくて、僕は彼女の異変に気づけなかった僕が嫌だったんだ。そんな事すぐに気づけたはずなのに、なんで気づかなかったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!