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ねぇ、こんな話聞いたことある?
「隙間」ってあるじゃん?
そうそう、襖や扉を最後までちゃんと閉めなかったり、家具のサイズ間違えて壁との間に出来ちゃうアレね。
そういう隙間って、家中にあると思うんだけど、絶対に一つの隙間をずっと見つめたらダメなんだって。
何でって?
じゃあ、ちょっと話変えるけどさ、動物飼ったことある?
ハムスターか、それは説明にはちょうどいいや。
動物ってさ、狭い所入りたがるじゃん。何でだと思う?
そう、安心するんだって。自分が何かに接触してるのが、包まれているように感じて気持ちが落ち着くらしいよ。
それはさ、つまり孤独から逃れようとする一つの手段だよね。孤独を恐れるのは人間だけじゃないんだよ。
でも、やっぱり人間が一番孤独を恐れる生き物だよね。
孤独を感じて自ら命を絶つ人だっているんだからさ。
あ、ごめんごめん。話を戻すね。
つまりさ、家具と壁の隙間も、押し入れの中の隙間も、“狭い所”ってわけ。
孤独から逃れたいがために隙間を求めるものが集まるんだよ。
…それは…霊だよ。
霊は元々人間なわけだし、それに成仏できない時点で孤独感は更に増しているんだってさ。
だから、広い場所にポツンと居たくない霊たちは、隙間を求めているらしいよ。
決して隙間を見つめちゃダメ。特にこの話を聞いて、霊を意識しながら覗いたら絶対にダメだよ。
意識していると波長が合いやすいんだ。
何が起こるかって?
じーっと見つめていると、まず何もない暗い空間に、ポツンと二つの目玉が浮かび上がるみたい。
あ、でもその隙間に何体も霊がいたら、その数も増えるけどね。
ギロリと動く目玉は、どこか寂しげで君に何かを訴えかけてるように感じるらしい。
まぁ、実際に起きたら恐怖で支配されて、冷静に目玉の感情なんて読み取れないだろうけど。
でもね、ここからが大事。
そこで取り乱したらダメなんだってさ。
霊は、本当はもっと生きたかったって思ってる。生きてる人間らを逆恨みしてるかもしれない。
霊の目玉と目が合ったら、目で冷静に訴えかけるんだ。
そんな所に居なくてもいいんだよ、あなたは一人じゃないんだよ、って。
強く強く訴えかけるんだ。
すると、霊は知らぬ間に姿を消すらしい。
…でもね、取り乱して霊を恐れたり、攻撃なんてしてしまうと…目玉だけだった霊が真っ赤な光に包まれながら姿を現し、君に襲いかかってくるんだ。
君の“心の隙間”を目掛けてね。
…意識を失って気が付いた時には、君が隙間から自分の部屋を眺めているかもしれないね。
いいかい?
この話を聞いてしまった君は特に、興味本位で覗いたりしてはいけないよ。
…ほら、今部屋にいる君の周囲には隙間だらけだろ?
fin
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