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「わたしはあなたと同じ、管理人のエウリカ。まさか、自らの使命を喪失しているのですか」
今のナルの状態では、この男に太刀打ち出来るとは思えない。このままでは、わたしは記憶を消され、ナルも連れ戻されることになるだろう。
こんな日がいつか来るとは思っていた。ナルと堂々と暮らしていたのも、神という存在を詳しく知りたいという好奇心からだ。でも、今のわたしははっきりと恐れていた。わたしの記憶、そしてナルとの生活を失うことを。
「まあ、いいでしょう。あなたのことは後で考えます。……それよりも」
男が再びこちらを向いたのを視界の端で捉える。わたしは、全身に冷や汗が噴き出すのを感じていた。
「あなたには、全て忘れていただきます。わたしの目を見なさい」
「記憶を消すんですか」
「よくご存じのようだ」
こういう事態に備えて、わたしはいつも手鏡を持ち歩いていた。腰のポーチに手をかけながら、時間を稼ぐ方法を考える。
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