旭陽side

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旭陽side

大学の時、仲良くしてた奴に 「天海、俺…お前の事…好きなんだ」 そう言われた 何を改めて...と思いながら うっすらと頭の隅に浮かんだ、ある可能性を消した 「…うん…?…俺もだけど?」 だって、そいつは ほんとに気の合う奴で そのままで居たかったから 「……ふっ…んじゃ、これからもヨロシク」 ふざけた様に笑いながら 下を向いたあいつの 少し寂しそうな顔を覚えている ふざけた様に笑ってくれた、そいつは 今でも俺の親友で だけど、ずっとどこかで何かが 引っ掛かっていた 「俺達も、未だに信じられないんですけど、最近お互いの気持ちに気付いて…」 お互いの…気持ち… 「つまり…俺達今、恋人同士として、付き合ってるんです」 まるで、見ない様にしてきたものを突然突き付けられた様だった この子達は、未だに信じられない気持ちに気付いて 怖くなかったんだろうか? お互いではなければ、こんなに親しかった友人と離れる事になるかもしれないのに 真っ赤になって固まってる雪君を見る 母親が亡くなって、葬儀で色んな事あって 1人になったら失踪して 想像出来ない様な精神状態 そんな中…ちゃんと向き合って考えたんだ そんな雪君の傍に寄り添って、夏君も考えたんだ 俺達なんかより、ずっとずっと結び付きが強くて 失う事…怖かったろうに… なんて、言ってあげればいいんだろう 俺よりずっとずっと強くて 俺とは別の形で2人で居られてるこの子達に… 「…………えっと…えっと……おめでとう」 「え?…あ…ありがとう…ございます?」 夏君が、少し不思議そうな顔で答える おめでとうは、変だったか なんだ? 甥っ子に恋人紹介された時の、叔父の正しい対応は?? 「えっと…」 何だ? 恋人…恋人… 「あ、えっと…ベッドとか、変えた方が良ければ、言ってね?」 「ベッドですか?」 「2人で眠れた方がいいよね?」 「えっ?!」 「なっ?!いっ…要らない!そんなの要らないよ!」 あれ? 彼氏の場合そうなの? 「えっと…」 あと…何言えばいいんだ? 「旭陽さん…あの、今すぐ受け入れてくれなくて大丈夫です。そんな…簡単な事じゃないと思うので」 夏君が、真っ直ぐとこっちを見て話す 見透かされている様だ 今すぐどころか ずっと目を逸らしてきた俺を 「その…男の子同士の事は…あまりよく分からないけど、雪君と夏君が幸せならいいんだ。良かったね、同じ気持ちで…」 「はい。ありがとうございます。雪も、ほら…」 「~~っ…ありがとう…っございます」 よしよしと雪君の頭撫でる夏君に 「頭撫でんな!子供じゃないんだぞ!」 「子供みたいに、ちっこくなってたぞ?」 「うるさい!」 不思議だ 親友の部分はそのままなんだ 「あ…」 俺の視線に気付くと、雪君が大人しくなった 「旭陽さん、朝ごはん食べました?」 「いや…でも、大丈夫だよ」 「俺達も食べてないんで、何か簡単な物作りますね?」 「じゃあ、お願いしちゃおうかな」 夏君が、朝ごはんの支度をし始めた 雪君、ちょっと気まずそうかな 「雪君、大学はどう?」 「えっと…特に問題ないです」 「楽しめてる?」 「…まあ」 これは… 全然楽しんでなさそう 「何度も言うから嫌かもしれないけど、奨学金返すの、いつだって手伝うからね?バイトも社会経験だし、楽しいと思うけど、4年しかない最後の学生生活、楽しんでね?」 「…はい…ありがとうございます」 そもそも大学行く気なかったしな でも、行ったら変わるかなと思ったんだけど 「……姉さん…多分、大学行きたかったんじゃないかな」 「……え?」 「一度も口にした事ないし、雪君との生活を後悔した事もないだろうけど、俺によく大学の事聞いてきてた」 「……そんなの…全然…」 「ふっ…俺が大学生の頃で、雪君はまだ、ようやく喋り始めた頃だからね」 あ、恥ずかしそう 自分の小さい頃知られてるって、ちょっと恥ずかしいよね 「自分で書き換えた未来だけど、未練まではいかなくても、興味はあったんだろうね」 「そうなんだ…」 「だからね、自分の想いも含まれてたんじゃないかな。楽しそうなキャンパスライフ送ってる、雪君の姿、想像してたんだと思うよ」 楽しそうなキャンパスライフとは、真逆の表情しているなぁ 「俺は…大学より、早く働いて…母さん喜ばせたかった」 「雪君の気持ちは、充分姉さんに届いてたよ。でも、だからこそ…姉さんの為じゃなくて、自分の為を考えて欲しかったんじゃないかな」 「俺が…母さん助けたいって思ってたのに…全然…間に合わなかったけど…」 あんなんでも、この歳になっても たまには親の心配したり 親の為に頑張ろうかなんて、思う事ある その一切を奪われたんだもんな 「姉さんは、雪君を身籠った時点で、自分の好きな人生を歩むって決めたんだ」 「え?」 「全然別の道、あったよ。お金になんて、全く苦労しない道、すぐ目の前にあったよ。けど、どれだけの人に心配や迷惑かけても、雪君と生きてくんだって、決めたんだ。そんな風に生きれた姉さんは、幸せだったと思うよ」 天海を知らない雪君には分からないけど きっと、あのままだと 歳も性格も関係ない 姉さんとの相性も、姉さんをどう思ってるかも関係ない 立派な肩書きの人と結婚させられて 自分の子供時代と同じ思いを、子供にさせて 姉さんに、そんな生活堪えられなかった 「それは…俺が居たせいで…俺のせいで…」 「違うよ、雪君。姉さんは、雪君を身籠って、救われたんだ。そうじゃなければ、姉さんは、どうにも動く事が出来なかった。雪君の存在が、姉さんをあの世界から出してくれたんだよ」 あの世界は 姉さんには、全く合わない世界だから 「母さん…俺ができちゃって…困らなかった?」 「困らなかった。凄く喜んでた。俺は、びっくりしたけど、姉さんは、嬉しそうだったよ」 「~~っ…良かった…俺のせいで母さん…貧乏になっちゃったって…~っずっと大変だったから…」 そうだよね そう思っちゃうよね 「それでも、天海の家に居た時より、ずっとずっと笑ってたよ。雪君が小さな頃は、しょっちゅう会いに行ってたけど、いつ行っても姉さん、幸せそうに笑ってたよ」 「うんっ…」 「雪君が、夜泣きして眠れなかったんだって日も、イヤイヤって言う事聞かないんだって時も、いつも楽しそうだったよ」 「~~~~っ…うんっ…うんっ…」 姉さんの、ありったけの愛情貰ってても ずっと不安だったんだね 姉さんには聞けなかったよね 優しい子…
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