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彩雪side
なんだか、もの凄く幸せな気持ちで眠れた
ぐるんと寝返りを打つと
「ん~~…」
あれ?
誰……
って…
葉山だ
そうだ
葉山、泊まるって言って
一緒にお酒飲んで
ぐいっ…と、葉山に抱き寄せられた
あ…俺……
こうやって寝てたの?
葉山の匂いがする
安心する
そっか
こうやって寝てたから
幸せな気持ちで眠れたんだ
人肌…気持ちいい
ちょっとだけ、葉山の胸に頬を擦り寄せる
「葉山…」
久しぶりに抱いた感情は
すぐに胸がいっぱいになって
もう、いい大人なのに
自分の感情を持て余してしまう
「ん~?」
葉山が、頭撫でてきた
気持ちいい
あ…止まっちゃった
葉山の手があるので
頭動かすと、撫でてもらってるみたい
人に撫でられるのって
気持ちいいんだ
「ふっ…」
ん?
「このこのこの!可愛い奴め!」
葉山が、めちゃくちゃ撫でてきた
起きてたの?!
「葉山…おはよう」
葉山を見上げると
「おはよう…」
そう言って、軽くキスしてくれた
「……お前、頭大丈夫か?」
「……え?…えっ?!…何…何か……変?!」
「いや、そういうんじゃなくて…昨日、だいぶ酔ってたからさ…二日酔いじゃねぇのかなって…」
だいぶ酔ってた…
そうだっけ…
葉山と飲んで
そうだ…
美味しいお酒飲んで、雪君が可愛い話して…
雪君が可愛いって言って…
それから?
「俺…結構酔ってたんだっけ?」
「かなり酔ってたな」
「雪君が可愛いって話は、何回もした覚えある。あと…何の話したんだっけ?」
「………」
え…
なんで葉山無言なの?
俺…
何した?
「葉山…俺……何…」
「お前が誘惑するから、昨日俺達ヤっちゃったんだけど…覚えてないの?」
「……え?…や…やっちゃった…って?」
あれ?
恋人同士が目覚めた時の…
この会話って…つまり……
「え?」
「ん?少し思い出した?」
「えっ?!…う…嘘?!」
「なんだ…何も覚えてないのか…」
「お…覚えてない!」
「記念すべき初エッチだったのになぁ…」
そんなの済ませちゃってた事に驚きだけど
それで、何一つ覚えてない事にも驚きだけど
それより…何より……
「~~っ…葉山っ…」
「え…えっ?!何?!なんで泣いてんの?!」
「だって…だって……何にも覚えてない…~~っ…葉山とっ…初めて…~~~っ…何にも覚えてないっ…」
信じられない
そんな大切な日の事
何一つ思い出せないなんて
初めては一度だけなのに
酔って忘れてるなんて
信じられない
「ごめん…」
葉山が、ぎゅっと抱き締めてくれた
「葉山のっ…せいじゃない…」
「じゃなくて…嘘だ…ヤってない」
「……え?やって…え?」
「ごめん。ちょっと、からかっただけだ。そんなん、流石にすぐバレると思ったんだ…ごめん。こんな泣かせるつもりなかった」
え?
つまりは
葉山との初めては、まだって事?
「ほ…ほんと?」
「ほんと。いや…正直、キス魔になった白峰の誘惑に、負けそうになったのは事実だけど…」
「え?キス魔?」
「白峰…いいとこで寝ちゃうし…俺も睡魔に勝てず……ってか、本気でヤろうと思ったら、やり方知らねぇってば」
そうだった
でも…なんか、そういう流れになってとか…
良かった…
良かったけど…あれ?
「キス魔って?」
「ふっ…ほんと、何も覚えてねぇのな?お前、キスしてくれたら、キスしてくれたらって、何回キスしても、全然寝ようとしなかったんだぞ?」
葉山が、俺の涙を拭いながら
優しく微笑んでくれる
けど…
え?
「何回も…キスしてって言ったの?俺…」
「その可愛い顔で言われてみろ。断れなくてキスすると、気持ち良さそうな顔見せるわ。キスしたから寝ようっつ~と、キスしてに戻ってるわ。俺の理性に感謝しろ」
「ぜ…全然覚えてない……」
「すげぇな…それで二日酔いも無しか。どうなってんだ?」
どうなってるんだろ
良かった…
しっかりしてる時に、葉山とキスしておいて
そんなのが初めてだったら、ショック過ぎる
「葉山…俺が酔ってる時、どんなに何を言っても、葉山との初めての事、しないでくれる?」
「白峰、初めて酔ったのか?」
「人生で2回目」
「えっ?!1回目は?!誰の前だよ?!」
「え?大学の時…バイトの先輩が、少しはお酒に慣れといた方がいいとか言って…一緒に飲んだ時」
そう言えばあの時
お前は、酔っ払うと危ないとかなんとか…
あれから、酔う程飲む事なかったから、忘れてた
「そ…その…先輩とは……何もなかったのか?」
「親切な先輩で、いっぱいお世話になったよ?」
「いや…それは、どっかの店で飲んだのか?」
「先輩の家だよ?」
「白峰…先輩ん家で寝たのか?」
「うん…気付いたら寝てた」
はぁ~~…と、葉山が深い溜め息を吐いた
え…何?と思ったら
ぎゅ~~っと抱き締めてきた
「…葉山?」
「いいか?これから先、絶対に俺以外の奴の前で酔っ払うな」
「そ…そんなに酷いの?俺…キスしてって言う以外に、何したの?」
「何も……ただただ、ひたすら可愛いんだよ。お前の可愛いとこ見せたくないし、そんなの見ちゃったらお前…男だろうが、オッサンだろうが、襲われる…俺以外の奴の前で、酔っ払うの禁止」
これは…
嫉妬?
こんな…いい歳した
俺の事、そんな風に見るのなんて
葉山以外居ないのに
「嬉しい……約束する。葉山の前でしか、酔っ払わない…って言うか…もう、酔っ払いたくない。何も覚えてないもん」
「俺の前でなら、時々酔っ払えよ。いつもとは違う、俺だけの可愛い白峰見たいからさ」
「でも…葉山とした事、全部覚えてたいよ」
葉山は覚えてて
俺は覚えてないの
寂しいよ
「ふっ…じゃあ、昨日と同じキスする?朝から俺に襲われるぞ?」
「いいよ」
ちょっと驚いた顔をした葉山が
ピンッと、デコピンしてきた
「葉山?」
「朝から、俺を煽るの禁止」
「それは…約束出来ない」
「ふっ…小悪魔め」
そう言って
軽くキスして笑ってくれた
なんて…幸せな1日の始まり
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