0人が本棚に入れています
本棚に追加
はんぶんこ
どんなねがいもかなえてくれる不思議な存在ネガイヤ。その正体は謎に包まれている。見た目はきれいな男性のようでもあり女性のようでもある。妖艶だ。彼は心のスキマに入り込むことが上手だ。
婚約者が死んで、苦しんでいた青年。青年は生き返りをねがう。すると、ネガイヤが現れ、彼女を死ななかったことにしてくれるという。
実際に彼女は生き返っていた。
彼女にもう一度会えた。健康なままだ。生きていることに感謝。
しかし、彼女は青年を覚えていない。嘘だ。そんなはずはない。記憶喪失か?
しかし、彼女は笑って答える。
「私はネガイヤ様と結婚する予定なの」
そんな馬鹿なことがあるだろうか。
ネガイヤに抗議する。すると、どこからともなくネガイヤは現れる。
「あなたの彼女を奪ってしまったおわびに、彼女と何でもはんぶんこできるという魔法をかけます。本物の愛ならばこの魔法は有効なのですが、気持ちが偽物だったら、これは意味のない魔法となります」
想いをはんぶんこしてもいいし、自分の命をはんぶんこしてもいいらしい。青年は愛をはんぶんこしたいとねがう。もしかしたら、本物の愛ならばまた結ばれるかもしれないとわずかな希望を持っていた。
しかし、既に青年の気持ちは冷めていたので、はんぶんこしても愛にまでならない程度の気持ちにしかならなかった。今の青年の気持ちは偽物となっていた。
「でも、次に愛した人とはんぶんこできるように魔法をかけておきます。何をはんぶんこしてもいいですよ。視力でもいいですしね」
ネガイヤは申し訳なさそうに言う。
彼女は私がいただいてしまった罪滅ぼしですとつぶやき、消えてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!