私は守護天使

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目が覚めた時、知らない部屋にいた。 それで思った。 「私、助かったんだな」 最後の記憶は、トラックが突っ込んできた場面。 「もう、ぶつかる!無理!」と思った。 そして今、見たことのないベッドに私が寝ているということは、死ななかったんだ。 部屋の扉をノックする音と、ガチャリとノブを回す音が聞こえた。 そして天使が部屋に入ってきた。 え?天使?? でも、天使としか言いようがない。 髪の毛は金髪でクルクルパーマだし、金色の輪っかが頭上にあるし、白いシーツみたいなの着てウェストは紐で縛ってあるし、背中に羽が生えてるし、ちょっと浮いてるし。 「目が覚めましたか?」 天使は言った。 見た目も声も、中性的。 大人なのか子どもなのかも、よく分からない。 「私、助かったんじゃないんですか?」 「助かったのではありません」 「あなたは、その…、天使ですか?」 「その通り、天使です。 天使が見えているということは、貴女は死んでいます」 「はぁ…」 私は気の抜けた返事しかできなかった。 「それで、今後のことをご相談したいのですが」 天使が言うけれど、私はついていけない。 「展開が早過ぎませんか?」 「ここ天界と、人間界は時間の流れが違います。 急いだ方が貴女のためだと思うのですが」 「では、話を進めてください」 「貴女には二つの選択肢があります。 一つは成仏すること。 もう一つは、守護天使になることです」 成仏か守護天使の二択? 仏って「和」だし、天使って「洋」じゃない? 「それぞれの特徴を教えてください」 「成仏は、このまま『あの世』へ行きます。 前世の記憶もなくなります。 ただただ『あの世』で楽しくお過ごし下さい」 「じゃあ、守護天使は?」 「貴女にとって大切な誰かの守護天使になります。 人間界に戻って、大切な人を見守ります。 ただし、見守るだけです。 何もできません」 「守護天使になります」 「決めるのが早過ぎませんか?」 「私、6歳の子どもを残して死んだんです。 子どものことが気になります。 息子の守護天使になりたいです」 「まずは今日いち日、お試しができます。 本当に守護天使になるかどうかは、それから決めませんか?」 「わかりました。 では、まずはお試し守護天使からでお願いします」 こうして私は息子の守護天使として、再び地上に降り立った。
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