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「よかった。よかった。それじゃあおれも行くぜ」
「待って、ホッケさん。ぼく、ホッケさんに訊きたいことがあるの」
追い付けないくらいの速さで泳ぎ出そうとしていたホッケがくるりと振り返ります。
「なんだい?」
「あのね、ダンゴウオさんがホッケさんから聞いたんだって言っていたの。ニンゲンが、ぼく達のことを天使って言うんだって。天使って何のこと?」
「天使っていうのは羽が生えているんだって。だから、つまり、鳥の仲間のことさ」
「そうなんだ。似てるかなぁ」
「さあ、どうだろうね。でもねクリオネくん、天使って言葉には別の意味もあるんだぜ」
「それはなあに?」
クリオネの質問に、ホッケはとても優しい笑顔で答えてくれました。
「優しい素敵なひとのことを、天使と呼ぶんだって。だから、きっと、きみは天使だよ。ホタテはあんなに喜んでいたんだ。ひとのために頑張れる優しいきみは、きっと天使のようなひとなんだ」
「わあ、そう言われるとなんだか嬉しいな。天使って何か分からなかったけれど、嬉しい言葉なんだ」
クリオネはその場で回って喜びを表現しました。小躍りしている様子を見て、ホッケはにこりと笑います。
くるくる。くるくる……あらら?
クリオネはバランスを崩して、水の流れに少し引っ張られてしまいました。ひらひらの腕がくたびれてしまっていて、いつものようには泳げません。
「今日は、頑張りすぎちゃった。でもホタテさんのために頑張れてよかったよ」
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