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「けけけ。ヴィッツ。また死にぞこないを連れてきたのか」
話しかけてきたのは、顔中にタトゥーを入れた天使だった。
ぎょっとする僕をよそに、グッと親指を立て、パツキン天使は軽快に返事をする。
「おうよ。のろのろと死のうとするから、しょっぴいてやった。楽勝だぜ」
どうやら彼女の名は、ヴィッツというらしい。
ヴィッツは僕の頬をぐりぐりと拳で押しつけ、
「こいつよお、時代遅れでよ。今どき、別れを惜しませろだの走馬灯を見せろだの。おもしろいこと言ってんだぜ」
「マジかよ」
タトゥーの天使は爆笑し、僕の頭をおもしろおかしく叩く。
ほんとにここは天国なのだろうか。やさぐれた天使しかいない。まるで不良のたまり場に迷いこんでしまったようだ。
気づけば、数人の天使たちがぞろぞろと集まっていた。その天使のどれもがなにかしらぶっ飛んでいる。あきらかに二日酔いだったり、悪魔のコスプレをしていたり、けたけたと笑いっぱなしだったり。ろくなのがいない。
すっかり辟易していると、どこからかなよなよした声が聞こえた。
「こらー、あなたたち。またサボってえー」
なんとも頼りなさそうな感じだ。
声のしたほうを見ると、やっとまともそうな身なりをした天使が立っていた。手には指揮棒のようなものを持ち、それを振りまわしている。が、なんとも弱々しく、まったく怖くない。
「あら、ヴィッツちゃん。また、間違った人を連れてきちゃったの?」
「はあー!? 間違ってねえし。ちゃんと命令されたとおり連れてきたじゃねえか。天使長よお」
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