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天使長という言葉から察するに、この天使はヴィッツより上の立場なのだろうが、完全になめきった口調だ。一方で、天使長も天使長で、威厳もなにもあったものじゃない。だいじょうぶなんだろうか天国は、と他人事ながら心配になる。
ヴィッツは威圧的な態度で、懐から出した紙を天使長に見せつけた。
「ほら。ここの病院で、この病室の、この時間。指令書どおり、ちゃんとあってるじゃねえか」
「ヴィッツちゃん。あのね、その人は、となりの病室の人よ。残念だけど、部屋を間違えちゃったのねえー」
自信満々なヴィッツに天使長は優しく微笑み、のんびりと諭す。
「ウソだろ! てめえ、ややこしいことすんじゃねえよ」
ヴィッツは思いっきり僕の頭をどつく。八つ当たりも甚だしい。
「え、えーっと、話の途中で申しわけないんですが、なにがどうなっているのですか?」
どうやら僕はだれかと間違われて天国へ連れてこられたらしい。しかも、またということは、僕以外にも同じ目に遭った人がいるということだ。
「これはこれは。失礼しましたー。実はですねー、あなたの近くでお亡くなりになった方をお連れするよう命じたのですが、このヴィッツちゃんがうっかり間違えちゃって。ごめんなさーい」
おっとりとした口調で、天使長は謝罪するが、手違いで天に召されてはいい迷惑だ。僕は苦情も兼ね、天使長に文句を言った。
「だいたい、ここの天使たちはなんだってこんなに荒れているんですか。天使と言えば、もうちょっとおしとやかなものでしょう」
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