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「………はぁ…っはぁ…っだ、まれ……っ
はやく……これ外せ……っ!……天っ…俺にこんなこと、してっ……
てめぇ……っどうなるか……わかってんのかっ………」
「うん、そうだね……。
ばれたら、解雇だろうね………。うちの会社の……、
専務取締役の、大事な……ひとり息子のきみに……こんなことして。
ーーーもう、いいんだよ。……………どうでも」
天は情けない顔で笑みを浮かべる。だけどその目はまったく笑っていなくて。
かといって泣きそうなわけでもなくて。
何の感情も感じられないその虚ろな瞳が、
ついさっきまで、怖くて、厭らしくて、きもちわるく見えて仕方なかったはずの、その表情が。
少しずつ、すこしずつ。
柔らかくて、
温かくて、
貴いものに見えてくるような………気がして。
なぜだかわからなくて。
唇を噛み締めて、俺は目を閉じた。
「雫くん、………結婚するって、……本当……?」
「………」
「雫くん、答えて………」
「…………あぁ、……本当、……だ」
「……誰と………?……」
「…………うる、さい……てめぇに、関係、……ない」
「どうしてだよ?……ほら、答えて………」
「あぁ………くそっ……はぁはぁっ……専務のっ……
仕事の……と、りひきさきの……む、娘だ……っあ、あっくそっ止まれっ…
あぁいやだ……っ」
「どんな、ひと………?」
「会ったことも……はぁ…っ無いっ知らないっ知るかよぉっ…
好きで、……誰が………こんなはぁはぁっうああたすけて、……っ
とう、さんのっ仕事の、っ会社のために、はぁ、はぁっ
天っ……なんで、はぁ…なんでこんなっひどいことするんだよぉ……」
「ひどいこと………?」
「おまえはっ、俺をっはぁっ……う、らんでるんだろっ!?
俺が、俺があのとき……、お前を、突き飛ばして……っ
山で、……お前に……怪我を、…天のことを、…傷つけたから…っ」
「雫くん…………?」
「俺を恨んでるんだろう……っ!!だからっ、
こんな…こと……っ……ああ……。
俺が憎いんだろ……天……お願い、だよ
天っ…お願い、…あやまる、からっ許して……
ごめんな、さいっ……」
「ーーーーーーー何を、言っているんだ?」
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