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…………道らしい道なんてものはどこにもなく、草や木や石や土や花や虫をかき分けてたどり着いた僕だった。
「…………。……ここだ、多分、ここだ!! ……ここで……あってほしい……」と、願った僕は古びてはいるものの霊験あらたかな建物や息を呑む美しさの景観に目を奪われていた。
……何かが聞こえた。
鳥の鳴き声かと思ったら、胸に迫る人の声だった。
……小さな坂になっていたのか……蛇行しながら、社から姿を現した白衣と緋袴の女性は風みたいに笑い、述べた。
「…………あらあら、これはこれは〜。こんな深山幽谷へようこそでーす、人間の殿方〜〜」
「…………。は、は、はい。は、はじめまして! あ……あの、この辺りに……白蛇様をお祀りした神社がある、と聞いて……それで来たんです。……ここが、そうなのでしょうか?」
見た目からすると……僕よりは若いのだろうが……なんともいえない魅力に満ちた瞳で、こちらの全身を射貫く女性へ僕は問いかけた。
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