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絡まれて、ほどけて
昨日の夜は最悪だった。塾の帰り道、ネオンがギラつく飲食店が軒を連ねる繁華街を通ったばっかりに。
酔っぱらいのサラリーマンに絡まれた。よろけたせいで舗道に咲いてた綺麗な花を踏んでしまった。
向こうからよろけてぶつかってきたくせに難癖つけてきて。かけていたメガネがお笑いコントみたいにズレた。
地面に落ちたスマホの画面が割れた。
「あー、最悪。」
「どこ見て歩いてんだよ。」
「いやいや、普通に前見て歩いてたし。よろけてぶつかって来たのそっちだし。」
「あ?なんだテメェ、どこの学生だ?え?名前は?」
本当にしつこい。僕はこういう頭の悪い奴が大嫌いだ。
すると横からニュッと腕が延びてきてそのおじさんを僕から引き剥がした。
「ちょっとあんた何やってんの、酔っぱらいが。」
僕が踏みつけ折れた花をその手がいたわるように起こしてやってる。ズレたメガネも直してくれた。
「こいつがぶつかってきたんだ。」
「え?俺見てたけど。あんたがよろけてぶつかっていったよな。そこの店から出てきてよろよろして自分からこいつにぶつかったよな。
うわっっ酒クサ。」
「俺はそんなに酔ってない。なんだお前、生意気だな。」
店の脇にある自転車に鍵を差し込みながらそうやってまだ文句言ってくる。
「じゃあ警察呼ぼうか。俺、今見たこと言うけど。ほら、あっちのカメラにも、多分映ってんだろ」
「なんだお前。お前も同じ制服か。どこの高校だ?」
彼がスマホを耳に当て話し始めた。
「あ、警察ですか?今、高校生が酔っぱらいに絡まれてて。はい。今、自転車に乗ろうとしてます。飲酒運転…。」
「や、やめろって…。こら、子供は早くもう帰れ…」
自転車に股がりあわてて逃げるように帰っていく。
「へへへ。バーカ。」
去っていく後ろ姿にそんな言葉を吐いた。
「110番かけたの?」
「かけねぇよ、お巡りさんだってそんな暇じゃねぇだろ」
「あ、ありがと」
「ほら、よい子はもう帰んなだって。また絡まれるぞ?」
それが切っ掛けで真面目な僕が不良っぽい樋山と話すようになった。
樋山はあんな見た目だけど、一年生の頃は勉強が出来た。それがに急に学校に来なくなってあんな雰囲気になった。
うちの学校は進学校だしそれなりの奴が集まってる。噂では樋山は中学の時凄く優秀だったみたいだ。
なのになぜか今はあんなだ。
だからはっきり言って近づいてきて欲しくない。僕まで素行が悪いなんて思われたら迷惑だし…。
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