第三章 久々のぬくもり

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第三章 久々のぬくもり

「え」  ホテルと言うには小さすぎる入り口から入ると、決して広くはない薄暗いロビーがあった。日当たりが悪いというわけではない、わざとそういうふうに照明を落としているらしい。  人気はなく正面には大きなパネルに何枚もの写真が映っている。そのうちのいくつかは下の黄色いボタンが灰色になっていた。  ああ、これは部屋の案内なんだ。沙緒里は理解した。ここで部屋を選んで、そこへ向かう。そうすればフロントで従業員に顔を合わせる必要もない。彼女は夫とこういったところに来たこともなかったから、ラブホテルというものは知ってはいたが、実際に目にすると新鮮だった。  狩谷は黙ってパネルを見ていたが、やがて一つに手を伸ばして黄色いボタンを押すとパネルのすぐ下からカードが出てきた。それを取ると沙緒里を誘って傍らのエレベーターに向かう。  扉が開くと中から中年のサラリーマンらしき男とどう見ても学生っぽい女性が乗っており、相手は一瞬驚いた表情を見せたが沙緒里らの横をそそくさと出て行った。  空いたエレベーターに二人が乗り込み、ドアが閉まると静かに上昇した。沙緒里は今さらながらに心臓がバクバクしているのを自覚している。ここまで来てしまった。もう引き返せないという後ろめたさが彼女の心を支配しようとする。  その時、彼女の手を狩谷の大きな手が掴んだ。 「緊張してる? 大丈夫、沙緒里さんの嫌がることはしないから」  その手から伝わる暖かさ、力強さに沙緒里は緊張がゆっくりとほぐれていくのがわかった。と同時に危険な香りも感じていたが、それは彼女のここまでの行為も同じだと納得する。  それにエレベーターの狭い空間の中だと狩谷のつけているであろうコロンの匂いが沙緒里の鼻をくすぐる。爽やかでいてどこか刺激的な香りは彼女の期待をさらに高めていく。  ポーンと軽やかな音がしてフロアにたどり着く。廊下は狭く、一般的なホテルという感じはない。物音は一切聞こえない。床の絨毯の毛足が長く、それが音を吸収しているのもあるだろうが、防音がしっかりしているのだろう。こういうところは秘密が大事だ。先ほどのカップルのように。そしてそれは沙緒里達も同じだ。  部屋の前に憑くと狩谷がフロントで受け取ったカードキーを使って鍵を開け、ドアを開くと沙緒里を招いた。 「へ、へぇ」  部屋は入ってすぐ右手に洗面台やトイレ、そしてその並びで浴室がある。ガラス張りの浴室など話の中だけかと思っていたが、実際に目にするとちょっと気後れしてしまう。  その奥にキングサイズよりさらに大きなのベッドがある空間がある。床にはワインレッドのふかふかの絨毯で、入り口で履き替えたスリッパでは少々歩きにくいほどだ。ベッドの頭のほうの壁はペルシャ絨毯を思わせるようなカーテンが掛けられているが、これは装飾だろう。反対に足元のほうには百インチはあろうかという大きなテレビがあり、チャンネルの説明画面が映し出されていた。  そしてベッドルームの奥、突き当たりの壁には、壁面全部が大きな鏡になって沙緒里達を見返している。もちろんそこには巨大なベッドも映り込んでいる。  確かにそこは、ビジネスホテルやリゾートホテルにはない、ある目的のために作られたとわかる特徴があった。それに沙緒里は圧倒される。 「沙緒里さん」  狩谷に呼ばれて振り向いたときだった。 「!!」  いきなり唇を奪われた。拒絶する間も何もない。そのまま狩谷は驚いて目を見開いた彼女のウエストに腕を回して抱きしめてくる。  はじめは力強く沙緒里の唇を吸い、彼女の抵抗がないとわかるとやさしく啄むようなキスに変えてきた。そうかと思うとまた唇を押しつけてきて、舌を差し入れると口の中を、それこそ上顎から歯の一本一本、唇と歯の間、そして舌の裏までくまなく舐め回してきた。 「んん、あぅん」  沙緒里はこんな情熱的なキスは経験がなかった。夫は決してキスはうまい方ではなく、せいぜい唇を合わせる程度だったし、沙緒里もそういうものだと思っていた。しかしいろいろ余裕ができてきて彼女も知識を付けてくるといつかはこんなキスに憧れるようになってきていた。その機会がこんな突然訪れるとは。  それに狩谷はキスだけではない。腰に回した腕は決してきついわけではないのに、ガッシリと沙緒里を捕まえて彼の体に密着されている。服越しに伝わる体温がこんなにも心地よいと思えるとは予想もしていなかった。狩谷の体は筋肉質というわけではないが、それでもやはり男性というだけあってしっかりとした体つきにうっとりとしてしまう。アラフォーの夫は太ってはないが、それでも普段から運動の習慣がないこともあり引き締まった体をしているとは言いがたい。それに比べて今彼女を抱いている体はなんて魅力的なんだろうと思わずにはいられなかった。 「んあっ! はぁ、はぁ」 「いきなりゴメン。でも我慢できなくて。一瞬でも早くこうしたかった」  顔を離してまっすぐ見つめてくる狩谷の視線が恥ずかしくて沙緒里は思わず目をそらしてしまう。 「クーラー、もう少し強くしようか。あ、先にシャワー、浴びる?」  狩谷がベッドルームのほうに行ってエアコンのリモコンを取りながら言うので、沙緒里は汗ばんでいたこともあり先にシャワーを使わせてもらうことにした。今はちょっとでもいいから冷静になれる時間が欲しかった。初めてのことが立て続けに起こって沙緒里の頭はパニック寸前になっている。  洗面所兼脱衣所で着ていたパフスリーブの薄いグリーンのブラウスを脱ぎ、ウエストのホックを外して膝下丈の濃紺のタイトスカートも脱ぐ。淡いピンクのキャミソールとくるぶしまでのソックスも取ったところで目の前の鏡に目をやった。  淡いピンク地の全面に白い刺繍の入った上下セットの下着に身を包んだ沙緒里は、自分の姿であるにもかかわらず、まるで何も知らずに怯えている少女のように映っていた。豊満な胸や腰回りを見てもとても少女には見えないはずなのに、沙緒里にはそうとしか見えなかった。 (もしかして狩谷さんにもこんなふうに見えている?)  一瞬頭をよぎった考えを振り捨てると手早く下着も脱いでバスルームに入った。  やはりまだ暑いこともあって体は汗ばんでいる。沙緒里はシャワーを操作して適温にすると汗を流した。バスルームは結構広い。部屋に面した方が一面ガラス張りで余計そう感じるのかも知れないが、彼女はベッドルームの方を向くことはできなかった。だがこのすぐ脇で先ほど熱烈なキスをされたことを思い出し、思わず自分の唇に触れた。  愛されている。久しぶりにそう感じた。夫との間に愛情を感じないわけではないが、どちらかというと家族という感覚が強く、恋愛感情とはまた違う。だが狩谷は沙緒里のことを一人の女として愛してくれている。そう考えると彼女の中心がキュンと疼いた。  手早くシャワーを済ませ、備え付けのバスローブを羽織ってベッドルームに行くと、狩谷はソファでテレビを見ていた。 「ふふ、湯上がりの沙緒里さんの素敵だ」  言葉がいちいち沙緒里のもうなくなったと思っていた乙女心をくすぐる。 「馬鹿なこと言ってないで、狩谷さんもどうぞ」  そうするよと言ってソファから立上がり、沙緒里と入れ替わりにバスルームのように消えていった。  やがて聞こえてきたシャワーの音に耳を傾けながら、ベッドに腰掛けて洗面台から持ってきたブラシで髪を解く。冷静そうに装ってはいるが、こんなにドキドキしながら待っているのは久しぶりの経験だった。  他人が風呂を使っている音を聞くのもずいぶん久しぶりな気がする。そもそも今の住まいでは風呂場はリビングや洗面所の向こうだし、新婚当初に住んでいた部屋でもいくらか離れていた。だが新婚旅行に行ったハワイのホテルでは玲一と一緒にホテルのやけに開放的な風呂に入ってはしゃいだことがある。あのときはお互い照れもあったし、その後そのままベッドに行ったこともあり、すっかり忘れていた。  それと今はまったく状況が違う。今のシャワー音の主は今日会ったばかりのほとんど何も知らない男性で、夫には黙って会っている。しかも今沙緒里は真新しい白のバスローブの下は下着一枚着けていない。これは武村らに言い含められたのだが、女が主導権を持つためにもできるだけ大胆にいくべきだと教わっていたせいなのだ。  少ししてバスルームのドアが開く音が聞こえる。沙緒里はその方には背を向けてベッドに腰をかけていたのだが、それでも耳は狩谷の毛足の長い絨毯を踏みしめる微かな足音にものすごく敏感になっていた。 「おまたせ」  そう言いながら沙緒里のすぐ横に座ってくる。 「きゃあっ!」  狩谷は裸の腰にタオルを一枚巻いただけのワイルドな姿だったのだ。 「別に男の裸見るのが初めてって訳でもないでしょ?」  さも当然のことのように言いながら狩谷は沙緒里の前に立つと、腰のタオルに手をかけた。 「!」  一糸まとわぬ全裸になった彼の股間には、凶暴な肉茎が屹立している。凶暴、そういう言葉が一番ふさわしいだろう。決して大きいというわけではないと思うのだが、そこここに走る血管が太くうねっており、さらに陰茎の中程がひときわ膨らんでいる。さらには亀頭部も大きくエラが張っており、これでアソコを擦られたらと思うだけで沙緒里の中心は濡れてくるようだった。 「そんなに凝視して。僕のものが気に入った?」  口調に嘲りの成分が混じっているような気がしないでもなかったが、そう言われても目が離せなかった。夫のものもこんなにじっくりと見たことはないが、薄暗い寝室で見た限りではここまでではなかった気がする。 「ふふ、いつまで自分だけ見てるつもりなのさ」  狩谷が沙緒里のバスローブの襟元を掴むと一気にそれを開いた。 「きゃあっ!!」 「やっぱりね。そっちのその気なんじゃん」  紐もほどけ、沙緒里の胸から腰までが露出する。慌てて残った方で隠そうとするが、その手は止められてしまった。 「もう、濡れてきてるんでしょ?」  耳元に顔を寄せてそう囁かれると、沙緒里はかぁっと顔が熱くなる。  そうなのだ。ホテルの部屋に入っていきなり唇を奪われたときも今も、彼女の意図しない場面に出くわすと胸が高鳴り、体の中心が疼いてしまう。 「ほら、こうしたらどう?」 「あっ」  背後のベッドに押し倒され、狩谷の片手で沙緒里の両手は頭上に捕まれると、そのまま彼は沙緒里に覆い被さってくる。 「ああ、キレイな肌だ。たった一人の男に独占させるのはもったいないよ。張りもあるし、それに何よりいい匂いだ」  すんすんと首元の匂いを嗅がれ、沙緒里は恥ずかしくてたまらず顔を背けてしまう。そんな彼女にはお構いなしに狩谷は残ったバスローブもその身から剥いでしまう。 「ああっ、いやっ! 恥ずかしいっ!」 「恥ずかしがる必要なんてないよ。こんなにキレイな体なんだから自信持っていいって」  実際、彼女はキレイだった。白いバスローブの広がる上に横たわる裸身はさらに白く光り輝いているようにさえ見える。モデルさながらのプロポーションもあって、とても子持ちの人妻には見えない。 「これ、すごいなあ。ご主人にもかわいがられてるの?」  Fカップのバストの量感を手で確かめながら聞いてくる狩谷の顔を見ることができない。本当は隠したいのに、その腕は頭上で彼に捕まれ、自由にはならないせいだ。  だが同時に、こんな状況であるにもかかわらず昂ぶっている自分にも気がついていた。先の狩谷の言葉のせいもあるが、自分は自由にならない状況が好きなのではないかという漠然とした考えが浮かんできていた。 「ふふふ」  抵抗しないことを確認して、狩谷はベッドサイドから垂れている沙緒里の足の間に立った。そうするともう沙緒里は足を閉じることができない。 「やっぱり。しっかり濡れてきてるじゃない」  彼女の中心は天井の照明にキラキラと光っている。 「いや、お願い、やめて」  懇願する声も弱い。  狩谷は再びベッドの上の沙緒里の体に覆い被さって耳元で囁く。 「嫌なら嫌と言ってください。僕は沙緒里さんの嫌がることはしたくないんです。でもそれは自分の本心なのか、本当に嫌なのか。もしかしたらその先に本当のオンナの歓びが待ってるかも知れませんよ」  そう言うと沙緒里の手を拘束していた手を離したが、それでも沙緒里はその体勢を崩すことができなかった。 「……」  狩谷は沙緒里の体に引っかかるように残っていたウエストのひもを解いてバスローブを完全に開いてしまう。 「ああ……」  見られている。今日始めて会った男性に、体の隅々まで見られてしまっている。そう思うだけで心臓がさらに一段と激しく脈打つのが沙緒里自身にもわかった。 「お願い……暗くして」 「そればっかりは聞けないなあ。だってせっかくの沙緒里さんのキレイな体だ。しっかり見たいからね」  そんな、と思うものの、その言葉にどこか胸躍る気分になるのも事実だった。でも沙緒里にはなぜ自分がそんなふうに思うのかわからない。 「ああ、キレイだ。とても人妻とは思えないよ。お子さんいるんだっけ?」 「あ、娘が一人……」  狩谷が沙緒里の足元にしゃがみ込んだまま聞いてきたので反射的に答えてしまう。 「へえ、一人産んでるのにこんなにキレイなピンク色をしてるんだ」  そう言うと狩谷は指で沙緒里の中心をそっと割り開いてきた。 「は、あんっ!」  優しくはあったが、それでも敏感な部分にいきなり触られたせいで思わず声があふれてしまう。 「ふふっ、濡れてるよ。期待してる?」 「そんなっ! 言わないでっ!」  沙緒里のそこは照明を反射してテラテラと妖しく輝いており、桃色の肉襞は何かを求めるように静かに息づいている。その下端からは今にも雫が落ちそうになっている。狩谷はそれに口付けた。 「ひゃうっ!」  ちゅっと湧き水を吸ったあと、舌を伸ばして沙緒里の柔らかく潤った肉弁を味わう。その舌が動くたびに沙緒里の内腿が引き攣れるように跳ねる。そもそも夫はクリニングスなんてしたことがなく、沙緒里も最近になるまで想像もしていなかった。しかしネットで知って以来、いつか自分も経験してみたいとは思っていたが、それがこんな形で実現するとは予想もしていなかった。 「ここは、ちょっと濃いめかな」 「いやっ、恥ずかしい」  沙緒里の秘唇のすぐ上に黒い茂みがある。そこを狩谷がかき分けると小さな肉の芽が見つかった。彼はそれを下からペロリとなめ上げる。 「はっ、あうんっ!」  信じられないような衝撃。体を貫き電撃のような感覚に思わず腰が浮いてしまう。 「おっとっと。ふふ、沙緒里さんは敏感なんだね。ホントに人妻なの?」 「っ!」  何か言い返したいが、言葉が見つからない。男性経験は少ないことを言った方がいいのだろうか? しかしあまり自分のことを言うのは危険な気もする。  何より頭が回らない。初めての経験。羞恥と快楽。次々と襲い来る刺激で沙緒里の頭はいっぱいいっぱいになりかけていた。 「まあいいよ。それにこっちとしてもそんなに反応してくれるとうれしくなっちゃうしね」  その言葉にはどこか笑いも含まれているようだったが沙緒里にはわからなかった。  狩谷は反応を聞く前に、今度は彼女の肉のボタンをついばみ始める。 「はうっ! あんっ! ああっ!」  狩谷のちょっと厚めの唇が沙緒里の敏感な部分をはさみ、吸うたびに彼女の腰が大きなベッドの上で跳ねる。  沙緒里は自分でも驚いていた。ここまで乱れるとは正直思っていなかったのだ。自分がこんなふうになること、そしてまだ何も知らなかったことに衝撃を受ける。 「沙緒里さんのここ、ビチョビチョになってるよ。こんなに感じてくれたんだね」 「はぁん」  狩谷がそう言いながら指で恥裂を開くのを感じ、沙緒里は甘い吐息をつくしかなかった。  彼女の内部はかなり充血したような赤い色をしている。狩谷はその中心のすぼまった孔に己の舌先を差し入れる。 「はうんっ! ああっ!」  沙緒里の腰が飛び上がるが狩谷の舌は逃がしてくれない。さらに奥へと侵入して沙緒里の内部の味を確かめていく。 「いやっ! だめっ! ああっ!」  自分の中で狩谷の舌が蠢くのがわかる。その舌が自分の敏感な部分を探り当てそうで恐い。探り当てられたらどうなってしまうのだろう。  だがそう思う一方で沙緒里の肉孔からは泉のように彼女のジュースが湧き出て、狩谷の口のまわりや沙緒里の内腿をべったりと塗らしていく。  もちろんこのくらいで狩谷は手を緩めたりはしない。両手で沙緒里の腿のあたりを抱え、彼女の大事な部分を顔の正面に持ってくる。 「ああっ! だめっ! 恥ずかしいっ!」  しかし腰を持ち上げられ、沙緒里は自分の体重の一部とはいえ肩から後頭部で支えなくてはいけないこの体勢にさせられては抵抗らしい抵抗もできない。それに対して狩谷はより深くまで沙緒里の中を味わえる。  彼はさらに舌を伸ばし、沙緒里の内部を舌先で抉っていく。 「はっぁあうんっ、くぅうんっ!」  舌だけではなく鼻で彼女の敏感な肉の芽も刺激していた。舌を深く差し入れることによって沙緒里の下の唇がより大きく開くようになり、そのため彼女のクリトリスも露出しやすくなっていた。 「ふふっ、ホントにかわいい反応するなあ。結婚しているとは思えないよ」  ひとしきり味わうと沙緒里を解放して彼女の足元で立上がり、口元を腕で拭う。それに対して沙緒里は荒い息を真っ白なシーツの上でつくのが精一杯だった。豊かな胸も濡れてべったりと貼り付いた茂みも隠す余裕すらない。 「ホント、素敵な体してるよねえ。子供一人産んでいるのにこんなにキレイだなんて、よっぽどお盛んなのかな?」  ベッドに上がって沙緒里の脇に寝そべると狩谷は手を伸ばして彼女の胸で上下に揺れる先端をつまんだ。 「はうんっ!」  それだけで背筋が反り返ってしまう。今はこれまでにないくらい敏感になっているようだ。ビクンと体が跳ねて、そのせいでFカップの乳房がたゆんと揺れる。 「すべすべの肌だね。まるで二十代の子みたいだよ」  そう言いながら沙緒里の胸を下から掬うように手のひらで包み込む。  沙緒里も男性のぬくもりを胸に感じ、なんとも言えない満足した気持ちになっていた。夫はどちらかというと性行為そのものに執着して、あまり胸など他の場所は触っていなかった気がする。  男性の大きな手で胸の肉まんじゅうをやさしく揉みしだかれ、沙緒里はうっとりとその感触に目を閉じて浸る。片方を手で包まれ、もう片方は口に含まれて両方同時に愛される。彼女の量感のある乳房はさすがにやや重力に負けて横になるといくらかは垂れているものの、ボリュームがあるせいであまりそれを感じさせない。むしろ年齢を重ねているが故の妖艶さが増して、男を惹きつける色香さえ出ている。 「あ、はぁ」  媚びたような吐息が漏れる。沙緒里自身は意識などしていないのに、自然とそんな声になってしまう。それくらい狩谷の愛撫は彼女のオンナを満足させた。  真っ白なシーツの上に白いバスローブが乱雑に広がった上で、沙緒里の裸体がホテルのやや抑え気味の照明に晒されている。彼女は男の目から逃れようと体をくねらせるが、その片足で股間を隠そうと腰をひねったり腕で胸元を覆うために肩をすぼめたりする行為が男を誘っているようでなんとも言えずエロティックだ。 「エッチな体してるなあ。ご主人も夢中になったでしょう?」 「夫は、ああっ!」  答えようとした沙緒里だったが、胸の先端をざらりと舐め上げられ、途中で喜声に変わってしまった。狩谷はわざと意識が逸れるようにやったのだ。不意を突かれてはひとたまりもない。  狩谷はそのまま続ける。舌先で小さな果実をクニクニと弄り、時に舌の腹で大きく舐め上げ、さらには前歯で甘噛みしてくる。 「ひゃうんっ! はぁあうんっ! くぁんっ! んああああっ!」  そのたびにベッドの上で激しく身悶えしてしまう。  何も考えられない。先ほどの狩谷の質問すらも頭には残っていない。ただただ絶え間なく波のように襲い来る快感に翻弄されるだけだった。 「さっきから足がもぞもぞしているね。こっちもまた触ってほしくなってきた?」  はっとした。まったく考えてもいなかったが、沙緒里の中心はすでにぐっしょりと濡れて、新たな刺激を求めていた。実際、彼女の秘苑は先ほどから泉があふれ出している。 「ああ、こりゃあ大洪水だな」 「いやぁ……」  半ばあきれたように狩谷が言う声を聞いて恥ずかしくて沙緒里は顔を覆ってしまう。しばらく放っておかれたことで彼女の恥貝はだらしなく涎を垂らすほどになっていた。狩谷はその雫を手のひらで彼女の内腿に塗り広げていく。 「わかる? こんなになってるよ」  自分が今どうなっているかを否が応もなくわからされてしまう。股間から溢れた粘液が腿の前にまで広げられ、改めて自分がどれほどいやらしい女なのかと思う。 「ここもこんなビンビンになってる」  狩谷が人差し指で先ほどより幾分大きくなっている沙緒里の陰核を無造作に触る。 「ひうっぅぐぅんっ!」  稲妻が駆け抜けたかのような衝撃で、沙緒里の体がスプリングの効いたベッドの上で文字通り跳ねる。脳が灼けたように意識が真っ白になり、頭の中からすべてのことが飛んでいった。 「もしかして今、イッた?」  その言葉は疑問ではなく確認だった。沙緒里は年下の男性にイカされたことが恥ずかしくて答えることができないが、その沈黙が何よりも明確な答えだった。 「ふふふ、その分だとあんまりイッたことないんじゃない? もしかしてご主人とではあんまりイッてないの?」 「そんなこと」  そういえば夫との行為で達したことなどあっただろうか。気持ちいいと感じたことはあったが、あんな仰け反るような快感を感じたことはなかった気がする。沙緒里はあ改めて自分が性的に満たされていなかったことに気がつく。 「じゃあさ」  狩谷がベッドに身をかがめて沙緒里の耳元まで顔を寄せて囁く。 「今日は思いっきり感じてみようか」 「!」  カーッと顔が熱くなるのがわかる。どんなふうにされるのだろう、どんなふうになってしまうのだろうといろんな思いが沙緒里の頭の中を駆け巡り、それだけで彼女の頭の中はいっぱいになってしまう。  すっと狩谷の体が離れると、沙緒里の腰のあたりの手を添える。彼女は今、ベッドの縁で膝から下はベッドの脇に垂らしているが、それをちゃんと寝具の中心へと移るように促す。彼女が移動する間に狩谷は枕元に置いてある避妊具を取ると手早くそれを自分の逸物にかぶせる。そのあと沙緒里の両足をいくらか開かせ、間に体を滑り込ませる。 「いくよ。いいね」  いきり立つモノを片手で沙緒里の中心にあてがう。ツプッと先端が潜り込んだだけで体が大きく開かれたような気がするのに沙緒里は驚いた。 「おお、思っていたよりキツいね」  意外そうに狩谷がそう言いながら体重をかけてくる。ズズズッとややきしむように分身が沙緒里の内部へと侵入してくる。 「はああああっ!」  夫の時とはまるで違う。彼のモノは入ってきても沙緒里の体の隙間を埋めていくような感じだったが、狩谷の場合は彼自身の形に無理矢理こじ開けていくような強引さがある。そしてその凶暴性というか野性味が沙緒里には新鮮でときめいた。 「わかる? 全部入ったよ」  狩谷が顔を寄せてきて耳元で囁く。言われなくても下腹部がいっぱいになって彼の体温や脈動を感じることができる。今日会ったばかりの男と一つになってしまった。その背徳感に沙緒里の理性がチリチリと焼かれていく。 「ああ」  体の中が満たされるという経験を久しぶりにしたせいか、それだけで軽く昇り詰めてしまった。視界で星がチカチカする。考えるのがおっくうだ。 「すごいよ、沙緒里さんのが僕のを咥えこんで、さらに奥へと引っ張り込もうとしてる」 「そ、んな」  自分では奥まで入ってると思っているのに、まだ物欲しげに蠢いてると言われて恥ずかしくなるが、思うように体に力が入らない。 「お望みとあらば、聞かないわけにはいかないよね」  そう言うと狩谷は沙緒里の尻を抱えて自分のほうに引き寄せる。  ずりゅ。 「はうんっっ!」  さらに一段深くまで剛直が入ってきた。もう奥まで届いていると思っていたが、まだ余裕があったのか。 「奥もキツいね。もしかしてここまで入れてもらったことない? この辺擦られるのって初めて?」  狩谷が自分のもので沙緒里の奥深くをグリグリと突いてくる。そのたびに目の奥で光がスパークし、頭が真っ白になる。 「あっ! あっ! あっ! あっ!」  頤を突き出して仰け反ることしかできない。狩谷の言葉に応えることもできない。  奥を突かれるたびに電撃が体を駆け巡る。快感の津波が腰から頭に一気に雪崩れ込んでくる。 (何これ? こんなの知らない)  沙緒里はただ翻弄されるだけだった。 「まるで陸に打ち上げられた魚だね」  ベッドの上で跳ねる姿を見て面白そうに言うが、そんな言葉ももう届いていていない。  ずんっ! と深くまで一気に突き入れられ、ずるずるとゆっくりカリで沙緒里の内壁を抉りながら入り口近くまで引き抜かれたかと思うと、また内奥に剛直が押し入ってくる。  まるで灼けた鉄棒が刺さっているようだった。その熱さに沙緒里は身悶えする。 「はうっんんぁああっ!」  豊かな胸をゆらしつつシーツを鷲掴みにして快感に押し流されないようにと抗う。軽くウェーブのかかった髪は乱れて幾筋かが頬に汗で貼り付く。ぎゅっと目を閉じ、歯を食いしばって内から溢れそうになる彼女自身の感情を必死に押しとどめる。 「何を我慢してるの。もっと自由になったらいいのに」  そう言いながら狩谷は体重をかけて腰を打ち付けてくる。そのたびにごりっと弱い部分を擦って彼女の意識を白濁させてきた。 「ひぃんっ!」  髪を振り乱して身も世もなく悲鳴を上げる。その姿はまるでうぶな少女のようでもあった。 「ホント、感じやすいんだねぇ」  狩谷が沙緒里の腰を両手でガッシリと捕まえて固定すると、逃げないように座った膝の上に抱えて彼女の柔肉の天井を灼熱棒でグリグリといじめる。 「あうんっ! いやあっ! ダメえぇっ! そこぉっ!」  今までにほとんど触られたこともない部分を乱暴に擦られ、沙緒里はもう快感の大渦の中でただ翻弄されるだけだった。 「すごいよ沙緒里さん、僕のを咥えこんで沙緒里さんのアソコがヒクヒクしてる」 「いやあっ! 言わないでぇっ!」  そうはいっても飛び跳ねる腰を押さえることができない。狩谷の膝の上に乗せられてるせいで足を閉じることもできず、天井の照明に沙緒里の秘部が煌々と照らされている。二人の分泌液でそこはテラテラと淫らに光り、また狩谷の逸物の動きに合わせてまるで独立した生き物のように蠢いている。 「まるで僕のが食べられてるみたいだ」  そう言いながらゆっくりと狩谷は腰を進めて沙緒里の中に分身を沈めていくと、それを飲み込むように秘唇が動いて飲み込んでいく。その様はなんとも言えず卑猥だった。 「はぁ、おっきい……」  沙緒里は片手を自分の下腹部に当てるとそっと撫でる。その指先に感じられるわけではないのだが、それでも自分の胎内に入っている狩谷の肉棒の輪郭がわかるようだった。 「女性にそう言われると、悪い気はしないね」  口調は優しいが下半身は猛々しく沙緒里の中で自己主張している。いくらか肉付きのよくなった彼女の体に指を食い込ませてガッシリと下半身を捕まえて自分のほうに引き寄せてくるせいで、沙緒里はまるで自分が拘束されているように感じ、そしてその拘束感、不自由感にどこか甘く痺れるような感情がわき上がってくることにわずかながら戸惑ってもいた。 「このあたり、気持ちいい?」  そう言って反り返った己のモノで、沙緒里の蜜壺の天井をごりっとえぐる。 「はぁぐっ!」  そんなところを強く刺激などされたことのない彼女にしてみれば、快感を通り越して苦痛に近いような強烈な感覚に意識がはじける。 「締め付けも強いし、中のザラザラもすごいよ。沙緒里さんのは名器だね」  褒め言葉を口にしながら、何度も沙緒里の最奥をゴンゴンと突いて、そのたびに彼女に獣のような声を上げさせる。 「あおっ! あぐぅっ! うぉっ!」  もう全身汗まみれで天井の照明にテラテラと怪しく光っている姿は、陸に上がったマーメイドのようだった。 「そろそろいいかな?」  狩谷はぐいっと沙緒里の腰を持ち上げ、完全に自分の上に座らせると彼女の上体を抱き寄せ、対面座位になった。 「あっ、あっ、あっ、これだめっ! 深いっ!」  そうは言いつつも沙緒里も狩谷の体を抱きしめ、離そうとはしない。もっともそれは今にも吹き飛びそうな不安定な意識をつなぎ止めようとした表れなのかも知れないが。  一方狩谷は沙緒里を抱えながら器用にあぐらをかくと、その腿の上で彼女を跳ねさせた。腰と腕の力を使い、リズミカルに人妻の裸体を上下させて玩ぶ。 「そら、このまま天国にまで飛んで行け!」  ひときわ高く数回沙緒里の体を跳ねさせる。そのたびに勢いよく狩谷の腰の上に落ち、そして彼女の弱いところに彼の陽根が突き刺さる。 「おっ! あおっ! はおうっ! あううううううんっ!」  ぎゅっと沙緒里が狩谷の頭をその豊かな双球の間に抱きしめ、ブルブルと小刻みに震えて狩谷に絶頂したことを伝えていた。強く閉じられた目蓋では長いまつげがいつまでも震えている。  全身を強張らせていた沙緒里の体を優しく抱きながら、狩谷は怪しい笑みを浮かべていた。
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