第一章 欲求不満の人妻

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第一章 欲求不満の人妻

 柔らかな曲線を描く肢体の上をシャワーから飛び出したお湯がいくつもの珠になって流れ落ちる。  御厨 沙緒里(みくりや さおり)は体に付いたボディソープの泡を流しながら、幾度となく見てきた自分の肉体を改めて見る。今年三十六になってさすがにちょっと贅肉が気になり始めてはいるものの、まだまだFカップのバストも九十センチあるヒップも若い子には負けてないという自負はある。それでもやっぱり全盛期は過ぎたという諦念は拭えず、それが最近の夫との関係にも表れてるのかなと感じた。  夫の玲一(れいいち)は三十九歳で会社では部長補佐。肩書きは順調に上がって言っているものの、今の仕事はもっぱら部下の労務管理と上司の補佐的な業務で仕事に面白さを感じられないといつもこぼしている。実際疲れているのか、帰ってくるのは決して遅くはないが、食事をして風呂に入ったらすぐベッドに行くことが多い。  娘の梨桜(りお)が受験を経てこの春から高校生になり、家の中の空気が和らいだこともあって沙緒里としてはまたかつてのように夫婦関係を取り戻したいと思っているのだが、なかなか玲一が乗ってきてはくれない。 「は……ん」  温かいお湯が洗う豊かな乳房を持ち上げ、先端にシャワーを当てると思わず声が出てしまう。ようは欲求不満なのだ。 「あ、やだ」  見れば白くたわわな果実の先端に濃い赤紫の突起が突き出していた。それに指で軽く触れるだけでじんと痺れるよな感覚が胸から背筋を通って頭に突き抜ける。 「んっ」  思わずそのまま触り続けたい気持ちになるのをなんとか押さえ込み、シャワーを止めるとタオルで体を拭きつつ脱衣所に出る。  バスタオルに替えて豊満な肉体の隅々まで拭う。沙緒里の肌はまだ十分に白く張りがあり、風呂上がりと言うことを差し引いても瑞々しく、年齢以上に若く見える。顔つきも丸顔で愛嬌があり、大きくやや垂れ目気味の目元や小ぶりの鼻、小さいがキレイなピンク色の唇など、パート仲間からもうらやましがられているほどだ。  体を拭き終わると下着を着けようと手を伸ばしかけて、ふと考えると用意していたいつものショーツではなく、洗面台の一番下の引き出し、その奥にしまってある箱を取り出すと、中から真っ赤な小さい布を取り出した。  目の前で広げるとそれは総レースのかなりどぎついもので、目の前で広げてみると向こうが透けて見える。その扇情的なショーツに沙緒里は足を通す。  その姿を鏡で見ると、前はくっきりと陰毛が透けていた。彼女の下腹部を覆うそれは少し濃い方かも知れないが、それでもここまで見えるとかなりエロティックだ。  彼女からは見えないが後ろ姿も相当に挑発的である。フルバックではあるのだが生地が前と同じなので沙緒里の二つの丸みとその間に形作られる谷間がはっきりと確認できる。尻たぶはやや垂れているように見えなくもないが、その肉付きが若い娘にはない色香となって見る者を魅了する。  この破廉恥なショーツの上から濃紺のパジャマを着て髪を乾かすと沙緒里は脱衣所を出る。そのパジャマの上からでもツンと突き出している胸の状態がはっきりとわかる。  夕食の後片付けやゴミの始末などをしていたのでもう時間は十一時を回っており、家の中はすっかり静かになっている。もっともこの時間でも二階の部屋にいる梨桜はまだ起きているかも知れない。それがかえって沙緒里の緊張感を高める。彼女は妙に緊張しながら必要以上に音を立てないように廊下を進むと、寝室に入った。  ベッドでは先に夫の玲一が横になっている。聞き耳を立てると規則正しい寝息が聞こえる。もう寝入ってるようだ。  沙緒里はわざとパジャマの胸元をはだけさせ、さらには寝間着のズボンも脱いでベッドに上がった。 「ねえ、あなた……」  玲一の肩に手をかけ、そっと揺すって起こそうとする。まだベッドに入って間もないはずだ。そこまで深くは寝入ってないだろう。 「んん?」  やはり玲一はすぐに気がつき、妻のほうを見る。 「なんだ、お前……」  そこで妻の格好を見て彼女の意図に気付く。 「悪いけど眠いんだ。寝かせてくれよ」 「そんな……」  妻の不満そうな言葉にもかかわらず、玲一は薄いタオルケットを引っ張り上げるとごろんと彼女に背を向け、また寝てしまった。 「……」  なんとも言えない感情が渦巻く中、沙緒里は仕方なくパジャマを着直すと夫の隣へと潜り込んだ。  翌日の昼間、平日ということで沙緒里は朝から家事の洗濯、掃除をしていた。  それらが一段落すると一息ついてリビングのソファに腰掛ける。窓からは夏が終わって秋が深まっていく中でどこまでも広がっていく空がよく見える。  沙緒里はふと夕べのことを思い出した。夫に不満はない。彼が忙しいのはわかっているし、今の仕事内容に不満がある中で頑張ってくれていることに感謝してもいる。  だがそれでも、と沙緒里は考えてしまう。  まだわたしは女でいたい。まだおばあちゃんにはなりたくない。  それが身勝手な願いであるという思いもあるが、彼女の中にある欲望ばかりは消せそうになかった。 「あ……ん」  知らず知らずのうちに手が胸へと伸びていた。まだ昼間は暑いので薄手のブラウスの下にはブラしか着けていない。その上からでも量感のある彼女の肉房は自分でもしっかりと感じられた。  下から持ち上げるようにするとずっしりと重みがある。それでいて服越しにでも柔らかさがはっきりとわかる。 「あ、ダメ……」  やめなきゃ、という気持ちが働く一方で、このままより深い快楽へと身を投げ出してしまいたいという抗いがたい欲求も覚える。  片手がデニムの股間へと伸びる。パンツの上からまたの間を押さえると、クチュッという濡れた感覚が伝わってきた。 「やだ」  濡れ始めてる。その事実が沙緒里を興奮させる。陽光降り注ぐ昼間に明るいリビングで一人自慰行為に耽る姿を想像するだけで、彼女の肉欲はさらに燃え上がっていく。 「ダメ……こんなところで」  目蓋を閉じて長いまつげを震わせ沙緒里は一人、ソファの上で身悶える。胸を揉む手も股間を押さえる指も止めることができない。 「はぁ、んっ!」  手の動きが徐々に大きくなる。真昼のリビングで窓から陽光も燦々と照らす中、沙緒里は自分の行為に溺れていく。  我慢しきれなくなり、服の上から揉んでいた手をシャツの下に潜り込ませると、そのままブラジャーを押しのけ、直接胸を揉みしだく。自分でも豊かだと思う乳房は彼女の手のひらには収まりきらずに指の間からあふれる感触がわかる。大きすぎるのではないかと悩んだ時期もあったが、玲一はこの胸を愛してくれた。だがそれももう過去のことのように思う。最後に触れてくれたのはいつだったろう。沙緒里には思い出せなかった。  股間もそうだ。彼女の手はパンツのファスナーを下げ、その隙間から手を差し入れるとショーツの上から秘肉を探るように指を動かす。すでにショーツのそこはぐっしょりと濡れていた。指で押すだけで、まるで水をいっぱいに含んだスポンジのように水分がにじみ出てくる。もちろん、それは水などではないのだが。 「はぁ、あぁ」  触れていると自分がいかに興奮しているのか嫌でもわかる。体は熱く火照り、鼓動は高まっている。胸の先端に息づく指先ほどの果実は堅くしこって手のひらにその存在感を伝え、下腹部の秘苑からは粘りのある泉が、そこを覆う布を濡らしている。 「ううぅん」  服が邪魔で思うように手が動かせないのがもどかしい。だがまだ昼間だという思いがギリギリで彼女を思いとどまらせる。それでも手の動きは止められない。胸を揉んでいる手はいつの間にか先端の肉ボタンを摘まんでコリコリと転がし、その刺激に背を仰け反らせ、下着の脇から恥裂の入り口を探っていた指はすでに第一関節までその中へと入り込んで柔肉をかき混ぜ、そこから湧き上がる愉悦で沙緒里の頭を真っ白に染め上げる。 「ああぁぁ」  指の数が一本から二本に、さらにより深くまで侵入していく。くちゅくちゅと淫らな水音がさらに高くなっていく。 (あの人のは、もっと太かったかしら)  沙緒里は記憶とたどって夫の逸物を思い出そうとする。かつて交わったときのあの幸福感。その記憶を探るようにより深く己の中を探っていく。 「はぁんっ!」  徐々に意識に霞がかかっていく。気が遠くなるようなこの感覚は沙緒里は好きだが、今はそれに浸ることはできない。 「うんっ、もうっ!」  誰に言うでもなく文句を一つ呟くと、沙緒里は自らを慰めていた手を止めて身だしなみを整える。  何気なく頬に触れると、その指先がいくらか温かい。赤くなっているかしらと沙緒里は自分の顔色がちょっと心配になった。
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