『シロクロ戦争』と『アカクロ戦争』

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『シロクロ戦争』と『アカクロ戦争』

 横暴なシロルキワの脅威に対抗するため、クロイゼンとハイラントは「クロハイ同盟」を策定した。  上記のクロハイ同盟の骨子(こっし)は………… ●大前提として、ハイラントとクロイゼンは「兄弟国」である。 ●ハイラント国は危機に瀕した領土を守備するため、国内でのクロイゼン軍の行動を許可する。 ●クロイゼン軍はハイラントの元国防軍将兵と連携し、シロルキワの魔の手からハイラント国の領域と国民を守る。 ●クロイゼン軍の将兵はハイラントの民に対し、いかなる乱暴狼藉(らんぼうろうぜき)もはたらかない。 ●ハイラント国からはクロイゼン軍が必要とする物資を与えることを約束する。  …………といったところであった。  シロルキワへの宣戦布告後、クロイゼンは国軍から主力軍集団を編成し、ハイラントへ向けて派遣することを決定。  ハイラントの国民は同軍を「シロルキワからの解放軍」として歓迎した。 f44ed0cb-54ef-42c6-9868-1ad40a5124a7  開戦してみると、クロイゼン軍は精強であった。  クロイゼン軍が誇る『鋼の馬』は快進撃をおさめ、ハイラントにいたシロルキワ軍を駆逐し、東へと後退させた。  旗色が悪くなったシロルキワは、国を統治する王族同士が親類であるアカルファンに応援を要請する。  応じたアカルファンは、海をはさんで南に位置するクロイゼンへ宣戦布告し、船を使って海から上陸しては同国を攻めた。  アカルファンを最初から敵視してはいなかったクロイゼンにしてみると、同国からの突然の来襲であり、予期せずに『アカクロ戦争』の開始となってしまった。  この状況はクロイゼンにとって、二正面作戦となる。 よって、「祖国が海より攻められている」と伝えられたハイラントに駐留するクロイゼン軍は本隊を国へ戻そうとした。  好機を逃さなかったシロルキワは、ハイラント内の防備が手薄となったのに乗じ、予め待機させていた軍を再びハイラントに侵入させては同国の元国防軍将兵たちを全滅させ、浮き足立つクロイゼン軍へも背後から襲いかかり、敵軍を西に押し戻し、さらにはクロイゼン国の領域を侵略した。  ……すると、クロイゼンの国内において、ある出来事が起こった。 「シロルキワ・アカルファン連合軍」に愛する国をおかされたクロイゼンの民は激怒したのだった。  クロイゼンは国内にいた国軍だけではなく、各領土の騎士団を用いての凄絶(せいぜつ)きわまる祖国防衛戦を展開する。  王の命令のもと、各々の領土の騎士団を国土防衛のため、一時的に用いることを取り決めたクロイゼン内では、軍人も民間人も問わず、国民が一丸となった激烈な戦いがとり行われた。 「私達の国を破壊しようとする鬼畜な悪魔は追い出せ」と、クロイゼン国内で自発的に人々は一致団結しては、想像を絶する防戦を行い続けた。  アカルファン軍は予想をはるかに超える甚大な被害を受けたため、数年でクロイゼンより撤退する。  これにより、『アカクロ戦争』は短期で終結した。  国内からアカルファン軍とシロルキワ軍を追い出したクロイゼンはハイラントから東の国境線を越えて、シロルキワ本国へと国軍を進軍させ、敵国の首都を目指す「シロルキワ本土攻略作戦」を決定する。  ハイラントとクロイゼン、双方の国民の絶大な支持があり、いきなり襲ってきたアカルファンを打ち負かしており、すべてが追い風となっていたクロイゼンはシロルキワとの最終的な決着をつけようとしたのである。  だがしかし、クロイゼン国王の急死から始まる指揮系統の混乱に敵国への軍事行動は行き詰まってしまう。  結果、勢いが盛り返してきたシロルキワ軍に追い立てられるかたちで、クロイゼン軍はハイラントまで敗走した。  その後、ハイラントのいくつかの拠点をおさえたクロイゼン軍は同地にて、戦を仕掛けてくるシロルキワ軍と、一進一退の膠着状態(こうちゃくじょうたい)へ入ってゆく。  シロルキワ軍はハイラントから西へクロイゼン軍を追い払えず、逆にクロイゼン軍はハイラントから東へシロルキワ軍を押し戻せなかった。  さらに駐留しているクロイゼン軍の目を盗んでは、ハイラントから密かに侵入してくるシロルキワ軍の強襲部隊とクロイゼンの国内守備軍との小競り合いは国の東部でも続いていた……。
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