3人が本棚に入れています
本棚に追加
山の老人
湖畔の緑が風で揺れた。
湖の前に老人が立っていると、大空から二匹の飛龍が羽ばたきながら降りてきた。
「…………ほほう、これはこれは」
一匹の龍の背から大地へ降りた女は老人へ気づいた。
「…………アッ」
足音を立てずに近寄ってきた老人は述べた。
「…………気を悪くせんでほしいのじゃが…………お前さん、ただの女性ではないな。……その姿は仮のものであろう」
女「…………わかるんですカ?」
老人「ああ。……長きに渡り、深山幽谷、人外境におると、いろいろとなぁ。……ワシはシナンという。……お前さんの名は?」
女「…………アガリア……といいまス」
シナン、と名乗った老人「…………フッ、ファファファ……。嘘は言っとらんのぅ。……本名じゃろう? その……一部といったところか。各地をまわって……何やら調べておるんじゃな。……お前さんに害意はないとみた」
アガリア、と名乗った女「…………そんなコトもわかるんですカ?」
シナン「うむ…………わかる、わかる……。自然とわかるものじゃよ……。……わしの住処は向こうにある。…………気が向いたら、来てみよ。……では、な……」
くるりと背を向けて、湖から立ち去ってゆく老人の姿をアガリアは見つめた。
「…………ふーん…………ヘンなおじいちゃん…………だネ…………」
……グルル、グルル〜ッ。
飛龍が喉を鳴らした。
「……いがいにいいひとだとおもうけれどなぁ〜って? ……。……ウフフフ……そうなのかモ……」
首を曲げる飛龍をなでながら、紅の瞳のアガリアはメガネをかけた。
最初のコメントを投稿しよう!