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国防の女神
虚勢を張っていただけだった。
「……はい、わたしに何か御用ですか?」と、本人が現れたのならば、どうしようもない。
とても戦って勝てる相手ではない。
この場で私は裂かれては殺されてしまったろう。
成すすべもなく敗れ、傍から見たら、滑稽なだけだったろう。
ドーーーンッ!!!
平原で衝撃波と大爆発がおこった。
背の低い雑草がはじけ飛び、緑の絨毯へは、いびつな大穴が出来上がった。
焦げ茶色の土が、ばらばらと空から降りそそいでくる。
爆風は町の内側まで届いた。
煙が風に流れた後、シロルキワ軍の騎士は平原へ戻ってきて、大声をはりあげた。
馬に騎乗した騎士「……見たか!? ゴルボラッホの住人よ!! すでに、エネイブは我らが占拠した!! クラマレイツも、ネツラークも、エレストロベインも、全て我らの支配下にある。ハイラントで残っているのは、お前たちの町と、河に近いイオールだけだ!!」
騎士は続けた。
「ここで爆発させた爆薬と全く同じものを我らは、何発も持っている!! お前たちが望むというのなら、町の中へと放り込んでやってもいいのだぞ!! 投げ込むための爆薬の準備も、我らは完了している!!」
さらに騎士は続けた。
「……国防の女神ジークルーンよ!! 貴様に告げる!! 町の中にいるのなら、出てこい!! 騎士ともあろう者が、恐れをなして身を隠すのか!? 軍人が、民間人を盾にするつもりなのか!? 貴様の属する軍は敵を見たら逃げろ、と教えているのか!? ……見損なったぞ、この卑怯者め!!」
「……邪悪な攻撃魔法で我らを焼き、吹き飛ばしてみよ!! ……得意の剣技で我らを打ち倒し、滅ぼしてみよ!! …………どうした、ジークルーン!? できないのか!? 貴様が出てこないのなら、さらに町へと近づけて、もう一発爆発させるぞ!!」
「……どうする!? 望みのままにしてやるぞ!! ジークルーン、そして腰抜けのクロイゼン軍兵士たちよ!!」
騎士が黙るとしばらくして、白い大きな旗をかかげた老夫婦が町から出て、平原に進んできた。
それを見た騎士はにやりと笑ってから、深い安堵を浮かべた。
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