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 アレクシアはもう一ヶ月近く貧乏な旅をつづけていた。フロックコートはひどく汚れていたし、首に巻いているオメガ襟はあちこちすり切れてボロボロだ。 「た⋯⋯、旅の途中です⋯⋯」  自分の行動や惨めな姿がものすごく恥ずかしくなり顔を伏せたとき、騎士が怪我をしていることに気がついた。  ——あ! ひどい傷だ!  騎士の右肩は血で真っ赤に染まっていた。弓が刺さったのを乱暴に引き抜いたような傷で、右肩のつけ根近くに深い穴が開いている。その穴から大量の血が吹き出している。真っ赤な血がポタポタと地面に落ちている。  普通の人間ならば気を失ってもおかしくない深い傷だ。  このまま放っておけば間違いなく命に関わるだろう。 「あ、あの⋯⋯、そんなにひどい怪我をしていらっしゃるのに、戦いにお戻りになるのですか?」  思わずそう聞いてしまった。  騎士は傷ついた腕で長剣をしっかりと握りしめていた。こんなひどい状態でもまだ戦い続けるつもりなのだ。 「部下たちが、俺を待っている」  騎士は静かに答え、アレクシアの問いが予想外だったとでもいうように、ハンサムな顔に少しだけ笑みを浮かべた。
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