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来訪
「えー…。
ほんとに、ココ?
場所、合ってんのかなぁ…。」
白井 翼はメモを片手に逡巡していた。
確かに、看板は在るのだ。
雑居ビルの三階の一番奥のドアに
木製、と辛うじて判る板に黒々とした墨でどどん!としたためてある
「萬屋 天地」
と。
「まんや てんち?
え?人名?誰?」
どうやら翼は国語が苦手な様だ。
「よろずや あめつち、と読むのですよ。」
急に後ろから声がして、翼は文字通り3㎝ほど跳び上がった。
「ぴっ…ぴっ…。」
「どうされましたか?ヒヨコでも憑依されましたか?」
「び…びっくりしたぁ…。」
「それは大変失礼致しました。
此方に御用件でしょうか?」
「あ…。…はい。」
「ではどうぞ。お入り下さい。」
ストライプの細身のスーツを纏った
濡れ羽烏の様に艶があり軽くウェーブがかかった黒髪をした、切れ長の眼のその人に促され
翼はドアを潜った。
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