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「ほら、えるる。いつまでそんなことをしているんですか。只でさえ少ない脳みそまで汗となって流れ出たらどうするつもりです?
お客様です。ご挨拶しなさい。」
秀麗な顔をしてなかなか辛辣な言葉をかける天野津に臆することなく、謎の真っ赤っか娘らしき人物が翼に話しかけた。
素振りは止めず、なんとも雑な感じではあるが。
「ふっ!はっ!ほっ!
やっほー。るるはねー、園寺えるるってんだー!よろしくー。
へっ!はひっ!んしょっ!
あ、るるって呼んでねー!
ほいっ!はっ!ほいせっ!」
「…全く礼儀のなっていない。
申し訳ありません。失礼な態度で。
悪気はないのです。知性と品性を根刮ぎ何処かに落としてきたようで。」
「…。はあ。」
「そこのふてぶてしくもぶくぶくしい猫はガブリエル、ガブと呼ばれています。貫通を狙った甘噛みをしますので手を出されない方がよろしいかと。
電話に威嚇している白い駄犬はてん、といいます。姦しいですが、途轍もなく臆病で身体より更に器が小さいだけなのでお気になさらず。」
「……。はあ。」
つらつらと流れ出てくる毒舌にも何となく馴れてきたなぁ、と思いながらぼーっと突っ立っていると
天野津は何処からか白い作業用の革手袋を取り出して手にはめて、ガブを持ち上げソファーから撤去した。
なるほど、ガブは革手袋がスルメかジャーキーだと思っているかの様にあぎあぎと噛み付いている。
そんなガブを脱いだ革手袋ごと華麗にぶん投げて、
天野津は何事も無かったかのように翼にソファーを勧め、にこやかに言った。
「では、御用件を伺いましょうか。」
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