「キリギリス」

1/1
前へ
/11ページ
次へ

「キリギリス」

草むら響く声 静かな夜に キリギリスが奏でる歌 秋の夜長に広がっていく 夏の日々を惜しむように その羽根を震わせ歌う姿 小さな命の短さを 知っているかのように熱く 月明かりが照らす 草陰の小さなステージで 彼の歌は風に乗り 遠くまで、夜の物語を紡ぐ 冬の足音が近づいても その声は止まることなく 一日を生き抜く喜びを すべての歌に注ぐ キリギリス 君の歌に 耳を傾ける者は少なくとも その響きは確かに届いている 秋の夜空のどこかに きっと
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加