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眉を下げて、俺がまだ裸にシーツを絡めているだけだからか、ちょっと視線を逸らして頬を赤らめている。
平日の朝、ほぼ徹夜なのにきっちり起きて出ていこうとするからには、きっと真面目な職業についているんだろうな。行きずりの相手に連絡先を教えるなんてしたこともないけど、まぁいいか、とめずらしく押し負けた。
遅刻させるのはしのびないし……なんやかんやと自分に言い訳をして。
相手をしなければいいだけだ。未読スルーして、終わり。ここでしつこく食い下がられるより楽だろう。
充電器につないでヘッドボードに置きっぱなしだったスマホを手探りで掴み、アプリを立ち上げる。二次元コードを表示させ相手が読み取ったと判断したとたん、パタンと腕を落として背中を向けた。
「じゃ……おやすみ」
「……えっ……制服…………?」
今度こそ帰ると思ったのに、まだそこにいる。アプリに表示された鷹哉のアイコンが気になったらしい。
そういえば友だちに後ろ姿を撮られた写真を、もう何年も変えていないのだ。
「ああ、おれの高校のだよ」
「高校生!?!?」
あまりにも大きな声で反応するから、もう一度ごろんと男の方を向く。シーツがずれて上半身が露わになる。
赤い情事の跡がそこかしこに残っている。
肘を立てて頬杖をついた鷹哉は、よろよろと後ずさる男を興味深げに見つめた。
「なに、高校生だったらだめなの? 若くないと、おにーさんに朝まで付き合えなかったと思うけど」
「児童福祉法第三十四条……東京都青少年健全育成条例十八条……」
「は?」
「僕は――未成年淫行をしてしまったのか……!?」
あとずさって壁にぶつかり、そのままズルズルと壁伝いに崩れ落ちる。驚愕と絶望の入り混じった表情で、男は意味のわからないことを叫んだ。
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