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「っくしゅ! うぅ、さむ……」  くしゃみをした鷹哉は悪寒に震え、ようやく朝になっていることに気づいた。かろうじてズボンは履いているものの、それ以外は昨晩のままだ。  身体が冷え切っている。熱いシャワーを浴びてから帰ろう。善が楽しみにしていた朝食は、とてもじゃないけど食べる気になれなかった。  のろのろと服を脱いでいると、洗面台の脇にキャラクターのカチューシャとサングラスが置いてあることに気づいた。これは鷹哉のじゃない。  忘れ物……でもない。もう不要だと判断して、置いていかれたものなのだ。 (善……もう本当に会う気ないのかよ)  目の前の事実にがく然とする。あんなにも好意を感じていたのに、これは決別の証のように思えた。わかってる、悪いのは全部鷹哉だ。  鏡に映る顔色の悪い自分から目を逸らした。  シャワーを浴びると、はじめは火傷しそうなほど熱かったお湯はすぐ身体が慣れてぬるいように感じた。鷹哉は目を閉じ、頭から湯を浴びる。    いつの間にか、善が自分のことを好きなのは当然で揺るぎないものだと勘違いしていた。鷹哉は好意に甘え、都合のいい嘘をつき続けていたのだ。  善が年齢を気にしていることは、はじめから分かっていたはずなのに。 「まじ性格わりー……」  誰にも愛されない、うす汚い内面がバレただけだ。本当の性格なんて見えない、ワンナイトが結局鷹哉にはお似合いなのだろう。  パターンから外れたとたんこのザマだ。後悔しても遅かった。 「気づくの遅せーよ……」  それどころか、嘘をついた時点でもうボタンはかけ間違えていたのだ。どの時点で打ち明けたとしても、怒らせたに違いない。でも、早めに鷹哉が誠実になっていれば……取り返せたかもしれないのに。  今さらはっきりと自覚する――好きだ。
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