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まっすぐ家に帰ると、それまでどうして動けていたのかと思うくらいしんどくなりベッドに倒れ込む。めまいと吐き気がして、もう二度と起き上がれないような気がしてくる。
(まじで風邪ひいてんの。ださ……)
善に見限られたショックで、半裸のままひと晩すごしてしまったせいだろう。情けなくて、みじめで、苦しくて涙がでた。もう、自分なんてこの世に存在しないほうが平和なんじゃないかと考えてしまう。
性的指向のせいで親に勘当された鷹哉は、もともと自己肯定感が低かった。
高校のあいだは代わりに県外の祖父母が一緒に暮らしてくれた。でも息子夫婦と縁遠くなってしまったのが申し訳なくて、大学に出てからは一度も会いに行っていない。
体調不良に引き出されたマイナス思考が、ぐるぐると頭のなかを回っている。たぶん、水分を摂ったり薬を飲んだりしたほうがいいのだと分かっていても、シーツの上で身じろぎさえできない。
(家に薬なんてあったか……? ばあちゃんが送ってきた荷物の中にあったかもな……)
仕舞った場所を閃きかけたけど、いつの間にかそのまま眠っていたみたいだ。
ピロン、とスマホのメッセージ通知が鳴って目覚めた。慌てて転がっていたスマホを拾い、画面に表示された名前を見て知らず落胆する。
「マスターか……」
いつもバイトを終えるくらいの時間だったから。もしかして、善からのメッセージなんじゃないかと一瞬期待してしまった。
(そんなはずねぇって……頭ばかになってんのかな、おれ)
気づけば汗だくで、喉はからからだ。熱が出てきたらしい。シャワー……は駄目なんだっけ。とにかく身体を拭いて着替えたい。
ガンガンと痛む頭を押さえながら起き上がり、マスターからのメッセージを確認した。
「差し入れ……?」
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