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◇  週に二回、夜八時になると店に出る。大学の友人たちには教えていないバイト先だ。興味本位で来られても困る。    だってここは……鷹哉の狩り場でもあるのだから。 「たぁくん、なーんか機嫌いいね? この前のお兄さんも……うまく行ったんだ?」 「そりゃもう。極上のタチだったぜ」 「そこまで!? じゃ、ついに遊びもやめるわけだ」 「なんでだよ。一夜を渡り歩くのが、おれの楽しみなの〜〜」 「ふーん。なるほど、振られたんだね」 「おいちげぇ!」  マスターは俺が客に手を出すのを容認している。それは、これまで俺がそのことで問題を起こしたことがないからだ。  相互同意は当然のことで、相手には媚びないしやることやったらそこでお別れ。それをお互い分かっていて儚い一夜を楽しんでいる。  朝までなんて実は初めてだったからこそ、この前は上手くあしらえなかったのかもしれない。 「彼氏、作ったほうが絶対いいのに」 「え、めんどくさくね……?」 「あーあ、愛を知らないお子ちゃまはこれだから。もったいないなぁ」 「まだハタチのお子ちゃまに愛なんてわかりませーん」  長年のパートナーがいる四十すぎのマスターの言葉も、まだ半分しか生きていない鷹哉には届かない。  この店で働きはじめてもうすぐ二年。出会いがこれほど簡単だと知ったのも、秀でた容姿でもない自分がそれなりにモテる感覚を味わえることも、鷹哉にはおもしろくて仕方がなかった。  カウンターから奥の小さな調理場に入ると、身だしなみ確認用の鏡が壁に貼ってある。  明るく染めた栗色の髪が一重の目にかかっているのが映る。細目、よく言えば切れ長の目と重めの前髪は、雰囲気イケメンといわれる所以だ。  
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