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「ブッ!!アズが?!」
エレンと名乗った子供は盛大に吹き出した。
相当面白かったのか、「あいつが、僕の?!」とケタケタと笑い出す。
「アズは、居候だよ。僕がこの部屋を貸してあげているの」
「えっと、じゃあ、お父さんとお母さんが大家さんをしているってこと?挨拶にいかなきゃ」
「違う、違う。僕が大家」
話が読めない。
首を傾げていると、扉がバンッと飽き、黒髪の子供が入ってきた。エレンと年はかわらなそうだ。
「お前、何、勝手に」
と言いながら、ずんずんとリコが横たわるベットに寄ってくる。
「抜け駆けじゃないって。お腹が空いているだろうと思ってパンの差し入れに」
「どうだか」
黒髪の子供は随分、迫力があった。
まず目力。そこから魔力が放出できるなら、一発で射殺せそうだ。
そして、年相応じゃない落ち着き。まるで、老人みたい。
ギャップのある子供だなあとリコは思いながら、
「誰?」
とエレンに向かって声を潜めて聞くと、
「え、この人?アッ……」
彼が言いかけている最中、黒髪の子供は強烈なひじてつ。
エレンは「へぐっ」とおかしな声を出し、床に片肘を付きかける。
「だ、大丈夫?」
「優しい。好き」
「え??」
子供の口からポロリとこぼれた言葉にリコは少し動揺。隣でもう独りが咳払い。
「俺は黒魔導師だ」
「それは名前じゃなくて職業なんじゃ?あのね、私はリコ」
「知っている」
「どうして?」
「アズから聞いた」
聞いているエレンは、横腹を押さえながらなぜかニヤニヤ。
「貴方もこの家に住んでいるの?」
「そうだ」
「子供と居候のあの人だけで?」
「リコちゃん」
いつの間にかエレンはちゃん呼びだ。
子供だから許せるけれど、これが同年代の男だったら要注意。
出会って数分でニックネームやちゃん呼びなど距離感が近い男にロクなのがいなかった。
「アズは僕の叔父さんなの。僕のお父さんとお母さんが死んじゃって、悪い大人に家を乗っ取られそうになった時に助けに来てくれたの。それ以来、側にいてくれている」
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