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「私のいた世界では、恋人同士が結婚して子供を生むのが普通だったから。子供ができないカップル、敢えて作らないカップル、離婚してシングルマザーが苦労するって流れもあるけれど」
「それじゃ、子供の数は増えないだろ。そいうい国はやがて衰退する。魔法で子供は生み出せないのだから、結婚と出産は義務や仕事とする方が効率がいい」
リコには納得しかねる。
特に女性側に大きな負担がある出産は、愛した相手じゃなければ感情面で受け入れられない。
だからこその魂の恋人という補填なのかもしれないが。
「生まれた子供は誰が育てるの?」
「最初の子供は父方、次の子供は母方みたいに契約で決まる」
「兄弟でも育つ家が違うのね」
「魂の恋人との間に生まれた子供と一緒に育つ場合もある。それでも愛情に差はないはずだぞ」
「エレンに、魂の恋人探しっていうのはまだ早いんじゃない?今、八歳でしょう?」
「一生の相手だ。探し始めるのは早いに越したことはない。エレンは結婚相手がいなくなったのだから、なおさらだ」
「そう言えば、さっき結婚が破談って。もしかして、パン屋を乗っ取ろうとしたのって?」
エレンが頷く。
「そう。結婚相手の親。家業どころか僕も家を追い出されそうになった。アズと森で出会って事情を話したら、結婚登録局まで出向いて結婚の約束を解消してくれたんだ」
「へえ。いい叔父さん。ん?森で出会って?」
訝しむと、エレンが声をひっくり返した。
「う、うん。アズはもともと住まいが森にあって」
「エレンのために、わざわざ住まいを移してくれたってこと?」
「そう!だから、僕が大家でアズは居候。間違ってないでしょう?」
アズはリコの国でいうエレンの後見人みたいな立ち位置。
家業も手伝い悪い大人を振り払いといろいろしてくれているのに、居候ってなんかおかしい。
「相手の親が悪いとは言え、結婚相手とのお別れは悲しかったわね」
すると、エレンはきょとん顔。
「どうして?」
「だって、許嫁だったんでしょう?」
「何度か会ったことはあるよ?でも、もう会えなくなって悲しいとは思わない」
ウィーが補足した。
「結婚相手というものは、俺達の国ではそういうもんだ。あくまでも契約。不正や不利益があったら破棄され、関係はそこで終わりだ。まあ、両親が残した店を乗っ取ろうとした者らに未練は沸かんだろ」
「大きなトラブルに発展することだってあるはずなのに、乗っ取りが起こったのはなぜ?老舗だったの?」
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