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それが遠くまで転がってようやく全容が分かった。
尖った金平糖みたいな黒いガラスのようなものだった。
「これは呪詛だ。お前の体内にあった」
「じゅ、そ?」
「呪詛師のくせに白々しい。呪い作りに失敗して自家中毒になったんだろう?こっちは魔導師だ。ごまかせん」
ブランケットの中から手が抜かれた。
「これで、起き上がれるか?」
背中に手を添えられて起こされ、枕を背中に当てられる。
胸が顕になりブランケットを摘んで引っ張り上げようとしたが、鉄みたいに重かった。
「なぜ、解呪されない?」
アズにそう聞かれても、こっちは魔法のことなど解らない。
「おい。それ」
指さされたその先は左胸で、黒点が渦巻いていた。それがどんどん大きくなっていく。
「嫌っ」
「騒ぐな」
諌めたアズが、急に胸を鷲掴みにしてきた。
柔らかな乳房が彼の大きな手に包まれ、指の隙間から肉が少し盛り上がる。
黒い渦が身体から引き抜かれた。
それは黒い金平糖みたいになり棘を持ち始める。
「お前、呪詛師のくせに呪詛を止められんのか?」
「意味が……」
「呪詛を覚える際、魔導を一部でも齧ったろうが」
「私は学生っ。ただのっ」
さっき取り出したはずなのに、胸にはまた黒い渦。
「キリがないな」
身体には痺れが発生しはじめていた。
「他に、方法は?」
「お前が呪詛を完全に止める。早い話が、恨みの元を断つ」
「恨み?そんなの……」
「無いのか、あるのか?」
途切れた記憶の断片がひらり。
外苑前のカフェで自分は携帯を見つめている。
連絡がないか何度も何度も確かめて。
「すっぽかされた。男の子との約束」
マッチングアプリで相手のページを確かめようとしたら、ブロックされていたのだ。
その瞬間、心が砕けたのだった。
アズが目を丸くしている。
そんな理由でと思っているのかもしれない。このド級のイケメンは。
でも、意外な答えが待っていた。
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