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急に乱暴になった。
頭を左右に振るが、押さえられた手は振り払えない。
アズがベットから腰を浮かせ、跨ってくる。
押し潰してくる体の中心には、はっきりと硬い感触が。
逃げようとその下でもがくと、低い声で「あ……うっ」
それと同時に彼の舌が、口腔から引き抜かれる。
口には変なものが咥えられていた。
焦げた木の枝のような。
長い炭の塊のような。
それが、ずるずると引き抜かれていく。
食道が圧迫され、顎が外れそうになった。
目尻に生理的な涙が浮かぶ。
アズがそれをさっと拭った後、上半身を起こした。彼は首を横にひねる。
勢いよく床に吐き出されたのは、炭の塊のようなもの。それはバラバラになって黒いトゲトゲした形の金平糖に姿を変える。
「これでしばらくは、大丈夫なはずだ」
「どれぐらい?」
「おそらく数日」
じゃあ、またさっきみたいなのしなくちゃらならないの?
義務的やると言ったくせに、さっきのはキス上級者が恋人にするキス……だと思うんですけど。
もしくは本当にあれが義務的で味気ないキスなら、この人が本気を出したらどうなるんだろう?
「呪いの元を断たない限り、今日みたいなのを繰り返さなければならない。時間だってどんどん短くなっていくはずだ。だから、呪いの元を断った方がいい」
リコを跨ぐのを止め、ベットから降りたアズが別室に消えていく。
金髪の子供が出ていった扉は廊下に繋がるもので、アズが開けた扉は風呂場に繋がってるようだ。
シャワーの音が聞こえる。
戻ってきた彼は黒いローブから、ボタンの無いシンプルな長袖シャツと紐を通しただけのズボン姿になっていた。
手には布の切れ端を持っていて、それでリコの顔をや首、身体と順々に拭いていく。
そして、「俺ので嫌だろうが、今夜はこれを着ろ」と丈の長い寝間着を着せてくれた。
「ありがとう……ございます」
「どうした?急に、大人しくなって。さっきの調子でいいぞ。お前、国はどこだ?」
「日本です」
「ニホン?悪いが聞いたことがない。なあ、ニホンとは世界の果てにある小国か?」
聞いたことがないのは、きっとこっちの世界に存在していないからだ。
自分だってルーセンという国名は初耳だ。
あと呪いとか魔法が存在する世界も。
ああ、どうしよう。
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