え、そこまでして?

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志津里の葬儀を終え......村人たちと集会所の座敷部屋で、通夜を行った。 酒と料理と思い出話しを、ゆったりと進めるなかで夜も更けたころ......。 村長である坂崎さんが、姿勢を正し、私たち親子へと身体を向けてきた。 「じつはね、わしら村中で......あんたら家族に言えないでいたことが あるんだ」 「は?なんでしょうか」 少し疲れた身体と心で、坂崎へと耳を傾ける。 「何年前だったかなぁ......うちの娘の由里子がね、若者向けの テレビドラマを観ていて、すぐに豊作くんだと気づいたんだよ」 「えっ!」  私と豊作は同時に叫んだあと、改めて坂崎さんへと向き直した。 そこで由里子ちゃんが頭を下げた。 「すみません、イエライちゃんが好きだって嘘をつきました。 本当は豊作さん......サットンの出てる作品のDVDを集めてます」 些細だが衝撃の走る告白だった。 坂崎さんが更なる告白を続けていく。 「そのときにわしは、これはマズイんじゃないか?そう思ったんだ。 なにしろ鍋島さんから『息子はM市の工場で働いている』と、 聞かされていたからね。 もしかしたら、豊作くんが東京にいることを、俳優をやっていることを、 言えない理由があるんじゃないか?と......。 よくは知らんが芸能界ともなると、過去を詮索されると色々と 言われそうだし、それもあるのかもしれないと」 坂崎さんの推測は、半分は当たっていた。 「た、確かにそうです。 私は許しましたが、妻は東京を恐がるので 妻にはバレないようにしました。 だから村の皆さんから妻へと情報が入らぬよう M市にいることにしてきました。 申し訳ありません!  あなた方を、私たち親子も、騙し続けていたのです」 「いやいや、そこはまあ、事情あってのことだろう。いいんだよ」 いま、村人全員が集まっている。 誰もが、優し気で、悲し気な、そんな複雑な心境の顔で......。 私と豊作とを、みつめてきた。
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