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豊作も泣きながら、しかし涙をぬぐわずに続けた。
『ごめん、母さんは、唇を読めるから、言えば伝わるから、
俺は、めんどくさがって、手話を習わなかった。
でも、このコミュニケ―ショーン、すごく大事だって、
次第に、わかってきたんだ。
いまはね、障碍者施設で、ボランティアしたり、してるよ』
私はハンカチを出して妻の涙を拭きながらも泣いた。
もう身体に力の入りにくい志津里が、ゆっくりと手を動かした。
『あなたは、自慢の息子よ』
そう、手が言った。
『父さんと、母さんの、愛は、離れていても、伝わってた。
俺は、間違いなく、二人に育てられてきたよ』
そう、手が言った。
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