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映画の制作は順調に進み、豊作自身も、どうにか無事だった。
売れ始めた俳優が事件被害者の息子であるという公表に対して
私は周囲の反応を気にして胃が痛む思いで......それでも妻には
話すことはできなくて、仕事のトラブルだと嘘をついた。
そして村人たちにも、ついにバレてしまう。
そんなあらゆる危惧は容易く乗り越えられた。
事件とはいえ時間が経ち、現代ではそれほど騒がれず。
もちろん心ない書き込みはネットに飛び交ったが、俳優としての
名島作豊には支障は無かったのだ。
更に村人たちは何も話してこなかった。
職場では、私の遠縁に預けられた息子の顔を知る者はいない。
そのおかげで私の日常も守られ、妻の志津里にも気づかれなかった。
こんなに上手く事が弾んでいいものかと恐いほどでもあった。
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