オルガン

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 この話には少し続きがある。それは僕が徴兵されて軍隊に行く直前の話だ。当時は徴兵されたら死ぬものと覚悟して臨んでいたから、僕も最後になにかやりたいことをやっておきたかった。だから僕は態々小学校に頼んで唱歌室へ向かった。他を当たればもっといいピアノで弾くこともできたろうに。でも僕はあのオルガンでないと嫌なのだった。清水先生と出会った場所。そしてあのオルガン。あの時はあんなに大きく堂々として見えたのに、その時はまるで年取った親のように小さくなっていた。  その時僕が弾いた曲は、最後に先生が聴かせてくれた別れの曲。ショパンは……敵国なのかそうでないのかよく分からなかったがあの時はそんなことどうでもよかった。オルガンが壊れてしまいそうなくらい魂をぶつけて弾いた。最後になるかもしれなかったから……いや、それが最後になったのだが。弾き終わって顔をあげると、その時の校長先生が僕の真に迫った姿……に呆気に取られていた。一言、ありがとうございましたというと、ハッと我に返り武運長久を……と定型文を発していた。
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