ひとさしゆび

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夏の海はレフ板の様、離れた丘の上でも直視が辛いほど眩しく光っている。 その時、モモが 「ママ、キーッ!」と言った。 「えっ?モモキーッて何?」 モモを見ると目を抑えている。 それを見て15年前夫と一緒に海辺を歩いた学校の帰道、その時の夫の言葉が甦った。 「ねぇ、綾はさぁこの時期の海を見て目がキーンてなんない?」 「何それ?変な表現!だいたいキーンて冷たい物を食べた時に言うんじゃない?」 「はぁ?それは頭がキーンだよね?俺は目がキーンなの!」 気がつくとモモが不思議そうな顔で私を見てる。 「ママ、キーン?」 夫との思い出と夫と同じ事をモモが言った事で目頭が熱くなってしまったのか、モモは私の目を見ていた。 慌てて苦笑いしながら 「っさっ!ばぁばが待ってるから行こうか!もう直ぐおじちゃん迎えに来るよ」 兄が迎えに来る時間だ、人差し指を差し出した。 お寺の入口に向かっていると日に焼けた顔にやけに白く見える歯を丸見えにして笑っている兄が手を振っている。 「よっ!綾、母親みたいじゃん」 「母親だし!」 久しぶりに会った妹にもうちょっと気の利いた挨拶できないんかい!と思いながら車に乗った。
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