一角獣の卵

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 アパートの部屋に帰るとチワワのあっくんが嬉しそうに飛びついてきた。 「ごめんね、遅くなって。ごはん、あげよう」  その前に服がびしょ濡れだ。  すべて脱いで、全裸で銀のお皿にドッグフードを入れていると、急に視界がぐらついた。  立っていられない。  なんとかあっくんの前にごはんを置くと、『待て』を命じることもできずに、ベッドへ急ぎ、倒れ込んだ。  お腹が張る。  まるで妊娠してしまったかのようだ。  意識が朦朧とし、私は電気も消さず、全裸のままで布団に潜り込んだ。  心配してあっくんが様子を見にきてくれたが、撫でてあげる余裕もない。  本能が私に命じていた。  眠りなさい──  産みなさい──  育てなさい──  何かが私の胎内でおおきくなっているのを感じる。  ものすごい速さで、膨れ上がるように……。  何かが、私の、お腹の中に、いる!  ヒィヒィと私は金切り声をあげ続けた。    それが、私の中から、出ようとしている──  子宮口を突き破り、とてもおおきなものが、膣内を押し広げ、出てこようとしている。 「や、やめてえぇぇえ!」  叫び声をあげ、枕をかきむしり、目を固く閉じては見開き、歯を食いしばったり、大きく口を開けて叫んだり、身をよじらせたりしながら、涙を振り絞って、いきんだ。  ぽんっ、と、何かが抜け出る音がして、苦しみが止まった。  あっくんが威嚇するように、それを睨んで吠えている。  見ると、私の股の間に、虹色の光を浮かべたバレーボールぐらいのおおきな卵が、あった。
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