一角獣の卵

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 眠りから覚めた私は、思わず「あれっ?」と声を漏らした。  ユニオがおおきくなっている。  昨日卵から孵ったばかりの新生児が、生後二ヶ月ぐらいの赤ちゃんになっている。  私の視線を感じたのか、眠っていたその目を開け、嬉しそうに笑い、言った。 「ママ!」 「ユニくん!」  私も笑顔になって、話しかけた。 「喋れるようになったの?」  しかしあとは「ダァダァ」と言うばかりで、言葉にはならない。  でも、「ママ」って呼んでくれて、嬉しかった。  すると自分がひどく疲れていることに気がついた。  嬉しかったが、顔をおおきく笑わせることができなかったのだ。  私は久しぶりに立ちあがると、キッチンへ歩いた。  水を飲む。テーブルの椅子に座ると、ため息を吐いた。  これが育児疲れというやつなのだろうか。何しろ初めて経験するので、よくわからない。  換気扇の下で、しばらくやめていたタバコを吸った。  そうしていると不安になってくる。  ユニくんがお乳を喉に詰まらせていたらどうしよう──  火を点けたばかりのタバコを消し、ベッドへ戻ると、不安は的中どころか、それ以上のものとなった。  あっくんが、白いボンレスハムみたいなユニくんの腕に、噛みついたところだった。
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