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ベッドの上で、チワワ犬が赤ん坊の腕に噛みつき、激しく頭を振っていた。
ユニくんの腕が、めちゃめちゃに肉がちぎれ、シーツに大量の赤い血が飛び散っている。
私は後ろから犬の尻尾を掴んだ。
ユニくんから口を離し、犬がこっちを見た。
思い切り後ろへ投げ飛ばし、壁にぶつけてやった。
ユニくんが腕を食いちぎられて、大泣きしている。
まずは犬を蹴り殺そうと思った。
やらなかったのは、ユニくんを見て驚いたからだ。
めちゃめちゃに食いちぎられた腕が、みるみる治っていく。
流れ出た血はそのままだが、傷はあっという間に塞がり、跡形もなく元通りになった。
再び襲って来ないよう、犬はケージに閉じ込めた。
「ユニくん、大丈夫?」
抱き上げ、胸元へ持っていくと、彼はもう笑顔になっていて、私の乳首に愛しそうに吸いつき、舌でしごいて飲みはじめる。
「あの犬、明日保健所に連れて行くからね」
おっぱいをあげながら、ユニくんの頭を撫でながら、私は言った。
「赤ん坊を襲った猛犬だから、その場で殺してもらおう」
するとユニくんが、乳首からちゅぱっと口を離し、言った。
「だめだよ、ママ。あのわんわんは、ぼくの遊び相手なんだから」
「ユニくん!? もう喋れるの!?」
「殺しちゃだめ。だってぼく、遊び相手がほしいもん」
「だめよ。あの犬はだめ。保健所に連れて行く」
「ぼく、だいじょうぶだから。あのわんわんのこと怖くないから」
「許してあげるの? だってあなたの腕を食いちぎった猛犬よ?」
「怖くないよ」
そう言って、銀色の混じった碧い目で、ケージの中の犬を見つめた。
「ね? わんわん?」
すると犬が急に笑いだした。
ケージの中でも凶暴に、飛びかかるような動きをしていた犬が、お座りをし、まるで魅了の魔法にかかったように大人しくなった。
一転、平和になった空気に流され、私はふっと笑ってしまった。
「仕方ないなぁ……。そうね、お友達が欲しいもんね?」
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