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「今、失業中なんです!明日こそは用意しますから!」
次に行った家では、まだ若い男が組員達に引き摺られるように庭に出て来た。
「その言葉なら、もう何度も聞いてるんだよ!」
男は組員達にボコボコにされ始めた。
俺は隣で見てる田中に訊いた。
「借金取りって、いつもこんな事してるのか?」
「金を出さない場合です。坊ちゃんの手を煩わせるまでもありませんぜ」
そういうつもりで訊いた訳じゃねーんだが…。
借りた金は確かに返さなきゃならねー。
だが、俺達は生活には困っちゃいねー。
それなのに、ここまでしなきゃならねー事なのか?
先輩のこともあるが、こんな方法で金を手にしようとしてた俺は、極道の厳しさを知らな過ぎた。
それとも、まだ慣れてねーから、そう思うだけなのか?
だが、慣れちゃいけねーと思う俺は、どこか甘いのかもしれねー。
その時、家の中から小せえガキが飛び出してきた。
「パパをいじめないでー」
「駄目だ、ヤスオ!家に入っていなさい!」
父親と思われる男を庇おうとするガキと、そんなガキを殴られながらも守ろうとする男。
その光景を見た途端に、俺は我慢が出来なくなった。
「田中」
「はい」
「今直ぐ帰るぞ。暴行を止めさせろ」
「坊ちゃん?!金が要るのでは、なかったのですかい?それに頭には、何と報告するんです?!」
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