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家出、バイト、そして、犯される
「俺のことは、今はいい。親父には、俺から話す」
「…解りやした。…おい!若頭からの命令だ!ここは退くぞ!」
組員達は驚いたように、動きを止めた。
「ア、アイアイサー!」
田中達とワゴン車に乗り込む。
ガキの泣き声が、車の中にまで聞こえる。
俺は、帰り道、老夫婦の姿と親子の姿が頭から離れなかった。
「この馬鹿者が!」
帰って、親父に事の顛末を話したら、いきなり殴り飛ばされた。
俺は部屋の畳の上に激突する。
口の中が切れたのか、鉄の味が広がった。
一緒に居た田中が、慌てた様子で止めに入った。
「頭!勘弁して下せえ!」
親父は田中には構わずに俺の元まで来ると、その胸ぐらを掴んだ。
「保。お前のしたことはな、ワシ達の仕事を勝手に奪って、組員達の日給を減らした事になるんだぞ」
「だからって、あそこまですることは、ねーだろ…」
そう言うと、親父に又、殴られた。
「…っ…」
「ワシ達は組員達の生活を支えている。日給が減ったら、生活に困る組員も、いずれ出てくる」
「…」
「保。お前はワシの跡を継いで上に立つ者。そうである以上は余計な情けは捨てろ」
「…よ」
俺は親父の手を振り払うと、立ち上がった。
「親父の跡を継ぎたくて生まれてきた訳じゃねーんだよ!」
「坊ちゃん!!」
田中が引き止めようとするのも構わず、俺は部屋を飛び出すと、自室で必要最低限の荷物だけ引ったくって、家出した。
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