家出、バイト、そして、犯される

1/10
前へ
/27ページ
次へ

家出、バイト、そして、犯される

「俺のことは、今はいい。親父には、俺から話す」 「…解りやした。…おい!若頭からの命令だ!ここは退くぞ!」 組員達は驚いたように、動きを止めた。 「ア、アイアイサー!」 田中達とワゴン車に乗り込む。 ガキの泣き声が、車の中にまで聞こえる。 俺は、帰り道、老夫婦の姿と親子の姿が頭から離れなかった。 「この馬鹿者が!」 帰って、親父に事の顛末を話したら、いきなり殴り飛ばされた。 俺は部屋の畳の上に激突する。 口の中が切れたのか、鉄の味が広がった。 一緒に居た田中が、慌てた様子で止めに入った。 「頭!勘弁して下せえ!」 親父は田中には構わずに俺の元まで来ると、その胸ぐらを掴んだ。 「保。お前のしたことはな、ワシ達の仕事を勝手に奪って、組員達の日給を減らした事になるんだぞ」 「だからって、あそこまですることは、ねーだろ…」 そう言うと、親父に又、殴られた。 「…っ…」 「ワシ達は組員達の生活を支えている。日給が減ったら、生活に困る組員も、いずれ出てくる」 「…」 「保。お前はワシの跡を継いで上に立つ者。そうである以上は余計な情けは捨てろ」 「…よ」 俺は親父の手を振り払うと、立ち上がった。 「親父の跡を継ぎたくて生まれてきた訳じゃねーんだよ!」 「坊ちゃん!!」 田中が引き止めようとするのも構わず、俺は部屋を飛び出すと、自室で必要最低限の荷物だけ引ったくって、家出した。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加