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翌日の昼休み。
秀才でマブダチの鈴木航(すずきわたる)と、俺は飯を食っていた。
「千夜くん。今日は朝から様子がおかしいですね。何かあったのですか?」
「…いいや、何もねー」
昨日の放課後、先輩に性的暴行を加えられそうになったなんざ言える訳がねー。
鈴木は何かを察したように言った。
「…無理には聞きません。話したくなったら、話して下さい」
「ああ…」
突っ込んでこねーところは、鈴木の優しさだ。
と、その時。
「千夜くーん、ちょっと良いかなぁー?」
木村(きむら)部長が、珍しく俺達の教室のドアのところまで来た。
俺は嫌な予感がしつつも、部長のところに行く。
「部長、丁度良かった。俺、部活、た…」
退部する、と続けようとしたところで、部長が俺の言葉を遮るように言う。
「吾作が今日、遅刻して来たんだけどねー。どうも眼科に行ってたようなんだー」
眼科…?
俺は、それを聞いて、昨日のことがフラッシュバックした。
2人きりの部室で、突然、俺を押し倒した先輩。
後頭部をぶつけねーように、受け身をとるのに精一杯で…。
そんな俺の上に覆い被さるように迫ってきた先輩を、俺は…。
この手で殴った。
先輩が目をおさえた事は覚えているが、眼科に罹る程だとは思わなかった。
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