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翌日。
田中は、いつもの車ではなく、ワゴン車で助手席に俺を乗せ、後ろに組員の内の何人かを乗せて、出発した。
幾つか借金してると思われる奴の所を回って金を回収する。
中には逃げ出す奴も居たが、組員達に捕まり、金を巻き上げられていた。
ところが、直ぐに回収出来ねー所もあった。
次に訪れたのは、質素な造りの小せえ一戸建てだった。
田中がチャイムを鳴らすと、歳老いた婆さんが引き戸を開けた。
組員達を見て、明らかに顔を青ざめる。
「あ、貴方…千夜さんの所の人達が…」
婆さんが家の奥に声を掛けている間に、田中達はグイッと強引に中に入った。
「借用書には、返済期限はとっくに過ぎてるぞ!ああ?!」
田中が、いつもとは別人のように、一枚の紙を、奥から出て来た爺さんと、震えてる婆さんに突きつけ、凄んだ。
「利子付けて、今日こそそっくり全額、返してもらおうか?!」
組員達が老夫婦を取り囲む。
爺さんが震える声で言った。
「済みません…15日になれば年金が入るんです…。それまで待ってもらえませんか…?」
それを聞いた田中は、借用書を組員に押し付けると、懐から何やら取り出した。
「これ見ても、そんな事が言ってられるのかあ?!」
田中が取り出したもの…それは、布に包まれた人間の手だった。
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