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「ひいっ?!」
爺さんが堪らず悲鳴を上げる。
「…う…」
婆さんの方は、口を押さえて真っ青になっていたが、堪えきれなくなったように、その場で吐いた。
吐いたモンが、組員にも掛かる。
「きったねーな!どうしてくれるんだ!?ええ?!」
掛けられた組員が婆さんの髪を引っ張った。
爺さんが見てられなくなったように、組員の間に割って入る。
「済みません!今、お金、少しですが、持ってきますんで、やめてください!」
あ?
だが、この家に金があるとは思えねー。
おそらく、生活費から捻出するんだろう。
生活はますます苦しくなりそうだ…。
俺は内心、やりきれなさが残ったが、その時、田中が又しても凄んだ。
「全額って言ったのが、聞こえなかったのかあ?!」
その余りの迫力に、爺さんはその場に土下座した。
「それだけのお金が、家には今、無いんです!もう少し待ってください!お願いします!」
それを聞いた組員の1人が、爺さんの髪を引っ張り、顔を上げさせる。
「そんな言い訳は通用しねーんだよ!やっちまえ!」
その声を合図に、組員達は、家の中に入り、金目になりそうもねーのに、家具の類を持ち出し始めた。
「や、やめてくれえー!」
爺さんの叫びも虚しく、組員達は、家の中のモンをそれぞれ手に取ると、引き戸を蹴り付け、外に出て行く。
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