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裏通りのオアシス
辺境都市ノルヴァは王国の西の端。おそろしい姿かたちの魔物が跋扈する未開の地――“入らずの森”に面している。
森からはときどき大規模な瘴気があふれ、異様に数を増やした魔物たちが王国領へと雪崩込む。獣、鳥、竜型。ときに一つ目巨人や猪頭巨人など、大型の群れも確認される。それらはどれも獰猛で、人間と見ればまず間違いなく襲ってくる。言うなれば害獣だ。
ふつうの獣と違うのは、魔法を使ったり、生半可な武器が通らなかったりと、何かと厄介なこと。
なかには人語を解する大物もいるらしいが……
閑話休題。
魔物の最大の特徴とは、すなわち体の内側に“核”を宿すこと。
核は“魔石”と呼ばれ、ちからある魔法武器や魔防具、魔道具づくりに欠かせない。そして、倒せば外皮や錬金術の材料になる希少素材がたっぷり手に入る。
だから、ノルヴァの主産業は魔物素材の「狩り」と「加工」。それに、狩りの担い手である冒険者たちを対象とする客商売だった。
ここ、ちょっと小洒落た外観と内装が売りの《星の明かり亭》も、そう。
日が落ちるころに開業する酒場を兼ねた木造宿は連日大賑わい。
値段は手ごろ。酒と食事はまぁまぁ。給仕の女の子たちも可愛いとあっては、先払いで常宿にする上級冒険者も多く、なんと駆け出し冒険者限定の格安プランまである。 大通りからやや外れた裏通りにあることから、知る人ぞ知る隠れ宿――そんな風に呼ばれているけれど。
(善いことばかりでもないのよね……)
知る人ぞ知る、とは、すなわち「知らない人は知らない」。つまり一見さんにはまったく知りようがない。とくに、流れの傭兵くずれや荒くれには格好の餌場に映るらしく。
――そう。度々こういうことが起こった。
◆◇◆
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