裏通りのオアシス

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「なあなあ、いいじゃねえか姉ちゃん。一緒に飲もうや」 「やっ……やだ! 離してください」 「『やだ』だってさあ!! かわいーねぇ、年いくつ?」 「ひっ……やめ……。お、女将! 見てないで助けてください!」 「――え? ああ、うん。ごめんねルチルちゃん、今行くわ」  満員御礼の夕食時。  身汚いふたり連れはずいぶん早い時刻から隅の席を陣取り、安酒ばかりを注文していた。おそらくは内地から流れてきたチンピラのたぐいだろう。女の子たちにも注意を促していたのだけれど。  経験則どおりに嫌な予感が的中し、サラは辟易と吐息する。腕を組み、つっけんどんに言い放った。 「どーも。お客さん。うちは、()()()()()()()ないんです。お代はお品と引き換えにもらってますからね。安心してお引き取りを」 「はあ?」 「嘘だろ? 女将? こんな嬢ちゃんが? 下手なハッタリとかいいからさあ、あんたもこっち来いや」  ギャハハ、と品のない笑い声に、サラはげんなりと物思いに沈んだ。 (嗚呼……どうしたらこの手の輩を店に入れずに済むのかしら。虫除け香? でも、あれって人間には効かないのよね、残念) 「女将ぃ! 憂えてないで戻ってきてください! お願いします!!」 「…………はっ!? ちょっと、何してんの! うちの子に触るんじゃないわよ」  ――しまった。ちょっとばかり本格的な魔法構築式を考えた隙に、ルチルは毛むくじゃらの男に腕を引っ張られていた。すると。 「やれやれ、そこまでだ」  見かねた常連客が立ち上がり、サラの背後から圧をかけてくれた。 (よかった)  サラは、ホッと肩の力を抜いた。  このケースだと、無力なあいつらに残された選択肢はみっつ。 ――――――❖――――――  ①ストレートに歯向かう  ②相手が有名冒険者と気付き、尻尾を巻いて逃げ出す  ③捨て台詞を吐き、悪態をつきながらすみやかに去る ――――――❖――――――
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